研究実績の概要 |
昨年度までに滑膜に存在する肥満細胞が滑膜における炎症を惹起していることを明らかにしてきた。肥満細胞皮膚に存在する肥満細胞(MC)にはCD88陽性MCと陰性MCが存在することが報告されている。しかし、滑膜組織におけるこれらのMCの特性は明らかになっていない。本年度はKOA患者の滑膜組織から磁気ビーズを用いてCD88+MC分画(CD88+CD3-CD14-CD19-CD90-)、CD88-MC分画(CD88-CD3-CD14-CD19-CD90-)を採取した。RNA抽出後、RNA-Seqを用いた発現変動遺伝子(DEGs)解析及びqPCR解析を行った。また、KOAと診断された患者をBMI(body mass index)に基づいて正常(<25 kg/m2)、過体重(25&-29.99 kg/m2)および肥満(<30kg/m2)の3群に割り当てた。各群の滑膜におけるTryptase (TPSB2), CD88の発現をReal time PCRを用いて比較検討した。253のDEGsが認められた。CD88-分画におけるトリプターゼ(TPSG1, TPSB2, TPSAB1, TPSD1)遺伝子の発現はCD88+分画に比べて有意に高かった。また、Mast cell 活性化マーカーであるCD69やマトリックス分解酵素MMP28, 種々の神経ペプチドの受容体の発現が認められた。肥満患者においてtryptaseの上昇を認めたが、CD88の発現に有意な差は認められなかった。CD88-MCはOAでの増加が報告されているMMP28を発現していた。また、近年着目されている感覚神経と肥満細胞の相互作用に関与する神経ペプチド受容体を発現していた。CD88-MCはOA特に肥満OAの進行や疼痛に関与している可能性が示唆された。
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