研究課題/領域番号 |
20K18074
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
木村 洋朗 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (40627048)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 末梢神経損傷 / 人工神経 / 再生医療 / 細胞移植 / シュワン細胞 |
研究実績の概要 |
キトサンとコラーゲンを材料に数種類のサイズの中空型人工神経を作成してSDラットの坐骨神経10mm欠損モデルに対して顕微鏡下に神経断端の架橋を行った。SDラットの坐骨神経に対しては、内腔2mm、外腔3mmの人工神経が至適サイズと考えられた。ラットに人工神経移植を行い1か月毎に移植部を観察すると、移植後3か月時点までは肉眼的に人工神経の形態が維持・確認されたが、4か月の時点では人工神経は吸収され消失していた。また、人工神経が吸収された部分には、再生した神経線維を確認することができた。採取した神経線維をホルマリン固定した後に凍結切片を作成し、各種の免疫蛍光組織染色を行った。再生線維には、NF200で染色される軸索およびその軸索の周囲にP0で染色される髄鞘が多数認められた。 以上より、キトサンとコラーゲンにより作成した2層構造の新規人工神経は、末梢神経再生の足場として機能していると考えられ、広範囲末梢神経欠損部に対する有力な治療材料となる可能性が示唆された。 また、上記の人工神経を用いてハイブリッド型人工神経を作成するにあたり、移植細胞としてシュワン細胞を選択した。SDラットの両側坐骨神経を採取し、シュワン細胞の分離・培養を行った。培養細胞は継代可能であり、免疫蛍光細胞染色でS100陽性のシュワン細胞を高純度に得ることができた。そして、得られた細胞集団に対して、移植細胞の生存・増殖を継時的に追跡できるように、レンチウイルスを用いた遺伝子導入により細胞の標識化を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルスの大流行に伴い、一定期間、研究室の入室が厳しく規制され、実験を行うことが全く許されない時期があったため、予定より進行が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後の実験計画として、まず標識化したシュワン細胞を人工神経のコラーゲン層に移植することでハイブリッド型人工神経の作成を行い、in vitroでの移植細胞の生存増殖能およびニューロンとの共培養による軸索伸長能を評価する。 次に、SDラットの左坐骨神経10mm欠損モデルにハイブリッド型人工神経を移植する。歩行解析による運動機能評価、バイオイメージングを用いた移植細胞の生存・遊走能の評価を2週間毎に継時的に実施し、移植後4か月時点で再生神経線維を採取し組織学的解析を行う。組織学的解析では、トルイジンブルー染色、免疫蛍光組織染色、電子顕微鏡検査を行い、再生軸索、髄鞘形成、血管新生などを定量的に評価する。 比較群として自家神経移植群、シリコンチューブ群を作成し、ハイブリッド型人工神経の優位性について、統計学的検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの大流行により研究に遅延が生じた。また、同理由により国内および国際学会の現地への参加が不可能になった。 上記により生じた次年度使用額を用いて、遅延した分の動物実験費用とする。 具体的には、SDラット購入及び飼育費や動物実験で使用する手術器具の購入費、細胞培養や組織学的評価の際に必要となる試薬の購入費用に当てる。
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