研究課題
変形性膝関節症(膝OA)関節軟骨破壊は、関節液中ヒアルロン(HA)酸低分子化による関節軟骨メカニカルストレス増大による間接的経路と関節軟骨HA-アグリカンネットワーク分解による直接的経路により進行すると推定されており、いずれにおいてもHA分解は必須のプロセスである。本研究課題では、HA分解に中心的な役割を担う新規ヒアルロニダーゼHYBID(hyaluronan-binding protein involved in hyaluronan depolymerization /KIAA1199 /CEMIP1)分子とその類似分子TMEM2(transmembrane protein 2 / CEMIP2)の膝OA関節組織での発現とその調節機構について検討した。まずはじめに、OA滑膜組織におけるHYBIDとTMEM2の発現と関節液中HA低分子化との関係およびOA滑膜線維芽細胞を用いた発現調節を解析し、IL-6刺激により発現亢進したHYBIDが関節液中のHA分解に中心的な役割を担うことを明らかにした(Am J Pathol 190: 1046-1058, 2020)。また、膝OA関節軟骨組織における両分子の役割を解析したところ、TMEM2の発現は恒常的でありHA分解活性もほとんどないのに対し、OA関節軟骨細胞ではIL-6とTNF-αの作用によりHYBIDが相加的に過剰発現し、OA関節軟骨組織のHA分解に関わることを実証した(Sci Rep 12: 17242, 2022)。これらのデータから、HYBIDは膝OA関節液中ならびに関節軟骨組織中のHA分解に中心的役割を果たしており、抗IL-6受容体抗体や抗TNF-α抗体などの生物学的製剤によるHYBID発現低下がOA関節軟骨破壊抑制に繋がる可能性が示唆された。
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Scientific Reports
巻: 12 ページ: 17242
10.1038/s41598-022-22230-z