研究課題
神経ペプチドとして知られており、近年鎮痛作用を有するとされる視床下部オキシトシン(oxytocin; OXT)に改変赤色蛍光タンパク1を標識したOXT-monomeric Red fluorescent Protein 1 (mRFP1) トランスジェニックラットを用い、視床下部領域の脳スライスを作成し、ホールセル・パッチクランプ法を行い、実験をすすめている。2021年度は、関節リウマチのモデルのアジュバント関節炎ラットのOXT-mRFP1ニューロンにおいて、LTPが誘発されないことを確認し、また電気刺激であるpairling-protocolでのLTPは、パッチしたOXT-mRFP1ニューロンでのpost-LTPであることを明らかにした。従ってOXT-mRFP1ニューロンにおけるpost-LTPは、アジュバント関節炎ラットの視床下部OXT-mRFP1ニューロンの変化と捉えることが出来る。またそのメカニズムを調べることは、炎症活性物質の細胞内シグナリングを検討することにつながり、またOXTニューロンへの関与について検討することが可能である。OXT-mRFP1ニューロンにおけるpost-LTPはNMDA受容体阻害薬であるD-AP5、PKA阻害薬であるKT 5720、細胞内Caキレート剤阻害薬であるBAPTAは、LTPの誘発・導入に関与していること(各種薬剤灌流下ではLTPは誘発されないことが明らかとなった)、またNO阻害剤阻害薬であるL-NAMEは、OXT-mRFP1ニューロンのpost-LTPの維持に関与していることを明らかになった(L-NAME灌流下ではLTPを誘発されるが、維持期においてLTPが減弱していることを明らかにした)。OXTニューロンの合成にはNOが深く関与してとされているが、電気生理学的にはLTPの細胞シグナリングでは維持期にあたることが明らかとなった。
3: やや遅れている
炎症性生理活性がLTPを抑制することが明らかになり、まずその細胞シグナリングについて詳細に評価することが最も最優先であると考え、現在実験に着手している。やや当初の内容とは方向転換が必要であったが、今後実験をすすめていく上で重要であり、また現在の内容を国際論文に投稿するためにも、非常に必要不可欠なステップであると考えている。
今後も引き続き骨炎症性生理活性の薬理学的作用とそのメカニズムについて検討していく。炎症性の生理活性物質として知られているIL-1β, 6, TNF-αのinhibitorを使用し、LTPとその細胞内シグナリングにどのように関連しているのか検討していく。オキシトシンニューロンのLTPを抑制するメカニズム、さらにLong-term depression (LTD)の実験を進めることで、炎症性生理活性物質と生理的鎮痛作用の機能連関が明らかになると考えている。さらに可能であれば、前帯状回・錐体ニューロン(慢性疼痛の原因とされる脳領域)での LTPに対して、これらの炎症性生理活性物質の薬理学的検討を行うために、同様にスライスでのホールセル・パッチクランプ法にて検討を行っていく予定である。
コロナ渦により、試薬購入・納品が遅くなり思うように研究が進まなかった。次年度は、さらに試薬購入、論文校正・投稿に使用したいと思う。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Cell Reports
巻: 36(3) ページ: 109411.
10.1016/j.celrep.2021.109411