研究課題
免疫チェックポイント阻害薬による生存期間の延長が複数のがん種で示され、がん治療において免疫療法は重要な選択肢の一つとなってきており、多剤併用による複合的免疫治療の開発も始まっている。しかし、これらの治療効果を予測するバイオマーカーは確立されていない。また、肉腫においては免疫チェックポイント阻害薬を含め生存期間の延長が証明された免疫療法は存在しない。本研究では、肉腫患者の腫瘍組織検体と血液検体を用いて、次世代シークエンサー、フロー サイトメトリー、液性因子解析により腫瘍内免疫応答を多層的に解析し、患者個々の腫瘍内免疫応答の特性を評価した「イムノグラム」を作成し、さらに詳細な免疫ゲノム解析を行う。本研究によって、肉腫患者個々の「イムノグラム」に基づいて、免疫療法が奏効する患者を選別し、最適な複合的免疫治療の提供が可能になると期待される。 今年度は、肉腫患者77例の検体を収集し、末梢血検体から末梢血単核球(PBMC)と血清を分離して凍結保存した。十分な量の腫瘍組織が採取できた症例については、腫瘍組織を細断し、一部は酵素処理などを行ってFresh tumor digest(FTD)を作成した。残りは培地上に播種し、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)および腫瘍細胞 を培養した。そして、得られたTILとFTDを共培養し、上清を回収してELISAでインターフェロンγ(IFNγ)産生を解析した。これらの解析から先行研究および昨年度の成果と同様に腫瘍細胞内に腫瘍反応性のTILが存在している症例があることを再確認した。さらに、これらの検体について、次世代シークエンサーによる解析のための準備を行い、一部について、腫瘍組織の肉眼的な癌部と非癌部、PBMCからそれぞれDNA、RNAを抽出し、全エクソン、RNAシーケンス解析を外注に出した。 また、先行研究である「胃癌の腫瘍内免疫応答の免疫ゲノム解析」、「頭頸部癌の腫瘍内免疫応答の解析」の結果について学会発表を行った。
2: おおむね順調に進展している
初年度につづき順調に検体の収集が進んでおり、第一段階の解析として、肉腫においても、腫瘍細胞内に腫瘍反応性のTILが存在している症例があることを再確認できた。また、一部の検体は次世代シークエンサーによる全エクソン、RNAシーケンス解析を外注に出し、残りの検体も、次世代シークエンサーによる解析のための準備を行っている。
次世代シークエンサー解析により得られた遺伝子発現プロファイリングなどから、腫瘍内微小環境の解析を行う。これらから、患者毎の抗腫瘍免疫応答を抑制し ている因子について、「イムノグラム」を作成し、フローサイトメトリー、液性因子解析の結果と合わせて腫瘍内免疫応答を多層的に解析する。さらにこれらの結果をもとに複合的免疫治療の可能性を検討する。
次年度には、今年度までに未提出の検体に加え、新たに収集した検体を、次世代シークエンサーによる全エクソン、RNAシーケンス解析に外注することを予定しているため。
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