加齢によって起こる骨量減少を引き起こす分子機構を明らかにするため、ミトコンドリア機能不全を誘導した細胞と骨量減少モデルマウスを用いて研究を行った。骨量減少モデルマウスの大腿骨中の骨細胞は核形態の異常を示し、ミトコンドリア脱共益剤CCCP処理を行った株化培養骨細胞でも核肥大が起きていることから核形態異常が骨代謝制御不全を誘導していると考えられる。 骨代謝制御不全と核形態異常の関連性を評価するために核膜構造維持に重要だと考えられる核膜裏打ちタンパク質lamin A/Cとlamin Bの発現を培養骨細胞で調べ、lamin A/Cとlamin Bの発現レベルと核膜構造異常及び骨形成抑制因子SOSTの発現亢進の関連性を明らかにした。これらの発現変化において転写因子ATF4の関与も明らかにしていることからATF4がどのようにしてlamin A/Cとlamin BおよびSOSTの発現制御を行っているか解析を試みたが、その分子機構を明らかにすることは出来なかった。しかし、骨量減少モデルマウスおよび老齢マウスで骨密度が低下している大腿骨の骨細胞でATF4が発現低下していることを免疫染色によって確認できたことから個体レベルでもATF4活性化が骨代謝制御不全に関与することが示唆されている。これらの結果からATF4は直接的ではなく間接的にlamin A/Cとlamin Bの発現制御を行い、核膜構造維持や骨代謝制御に作用していると考えらえる。 ATF4とミトコンドリア機能不全を起因とする骨代謝制御不全の関連性を明らかにする為、培養骨細胞でATF4の過剰発現や骨量減少モデルマウスへのATF4活性化阻害などの研究を行い、ミトコンドリア機能不全を起因とする骨量減少におけるATF4の役割をさらに解析する必要があると考えられる。
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