近年、前立腺癌の治療において、新規治療薬剤開発が進んでいるものの、ホルモン治療に抵抗性を示す去勢抵抗性前立腺癌に至り、遠隔転移を伴う症例への効果は限定的であり、その予後は極めて不良である。我々はこれまで、未治療前立腺癌および去勢抵抗性前立腺癌臨床検体を用いて、マイクロRNA発現プロファイルを作成し、それに基づき新たな分子ネットワークの探索を継続してきた。我々の作成した前立腺癌マイクロRNA発現プロファイルおよび、公共の前立腺癌検体における遺伝子発現のプロファイルを用いて、非癌、未治療前立腺癌、去勢抵抗性前立腺癌と段階的に発現の変化していたmiR-499a-5pに着目した。この制御する有力な癌促進遺伝子として、NCAPGおよびCDC6を同定した。これらは細胞周期に深く関与する遺伝子であり、miR-499a-5pによるこれらの遺伝子の直接制御と、miR-499a-5pの核酸導入による前立腺癌細胞株における癌抑制的機能を実証した。NCAPGについては我々がすでに報告している他のマイクロRNA(miR-145-3p、miR-99a-3p)も直接的に発現制御しており、複数の癌抑制型マイクロRNAによって制御されるこの遺伝子の重要性が推察された。NCAPGやCDC6については前立腺癌臨床検体を用いたRNAレベルでの発現解析から、miR-499a-5p発現との逆相関を確認した。また、去勢抵抗性前立腺癌を含めた前立腺癌臨床検体での免疫染色によるタンパクレベルでの発現を確認した結果。前立腺癌組織において、これらがタンパクレベルでも強く発現していることを証明した。このように、マイクロRNAを起点とする分子ネットワーク解析の継続から、本疾患の治療標的となりえるような重要な分子を見出すことにつながる。
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