研究実績の概要 |
放射線治療は前立腺癌に対する有効な治療法であり、近年骨転移を来した去勢抵抗性前立腺癌に対するRI内用療法が注目されている。しかし、RI内用療法単独の治療効果は限定的で治療後の再発が問題となる。本研究では放射線増感ターゲット遺伝子を前立腺癌特異的に抑制することで、正常組織への副作用を軽減しつつ癌への放射線治療効果を高める新規治療法の開発を目的とする。はじめにCRISPR/cas9システムを用いた網羅的ノックアウト・スクリーニングにより放射線増感ターゲット遺伝子の探索を行った。申請者らは、3種の前立腺癌細胞株(PC3, 22RV1, LNCaP)を用いて、CRISPR/Cas9システムによる網羅的ノックアウト・スクリーニングを行い、放射線増感ターゲット遺伝子の探索を行った。3種類の前立腺癌細胞株において、共通して放射線増感効果を示すトップランクの候補遺伝子、および共通して放射線耐性効果を示す候補遺伝子の同定を行った。さらに、放射線増感効果を示す各候補遺伝子をCRISPRシステムによりノックアウトした前立腺癌細胞株の樹立を行った。放射線増感ターゲット遺伝子ノックアウト前立腺癌細胞株はWild typeの細胞株と比較して、放射線感受性が高まることを、Colonyアッセイ、γH2AXアッセイ、コメットアッセイにより確認した。放射線増感ターゲット遺伝子ノックアウト前立腺癌細胞株に当該遺伝子をノックインすることで、放射線感受性は回復した。今後は、前立腺癌に高発現するProstate-specific membrane antigen (PSMA)を標的としたsiRNAデリバリー技術との融合を行い、画期的新薬(ファースト・イン・クラス)の開発を目指す。
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