研究実績の概要 |
本研究は、ハイスループットな新規RNA detection systemと最新の膨張顕微鏡法を組み合わせることで、膀胱がん組織におけるlncRNAの発現や細胞内局在を定量的に可視化することでlncRNAの働きを解明する事を目的とした。 免疫チェックポイント阻害薬の登場に伴い様々な癌腫でがん治療が飛躍的に進歩してきている。膀胱癌においてもペムブロリズマブが保険適応となり様々な初期使用経験が報告されてきているが、効かない症例や耐性がみられる症例がみられている。ペムブロリズマブを使用した55例の症例においてRECISTに基づいて測定可能な病変の115か所を経時的にサイズの変化について評価した。CRPやNLRに関してはその動態に着目し、responder, flare-responder, non-responderの3群に分けることができた。リンパ節での反応においてNLR kineticsが有用なバイオマーカーであり、OSに関しても多変量解析でPSや肝転移と共に独立した因子であることが判明した。 また、ペムブロリズマブを使用した症例の中で8例のlncRNAの発現を検討した。文献的に免疫関連細胞や免疫療法との関わりの可能性を指摘されているlncRNAとしてHOTAIR,MALAT1,NEAT1,UCA1,GAS5の5種類をまず選定し、計40検体においてquantitative in situ hybridization chain reactionを用いて実際にlncRNAを同定できることをホルマリン固定された切片から確認した。低コストでハイスループットな手法であるが、有用であることが分かった。 更に、ペムブロリズマブ使用前後での検体がある8例においては、剖検例を中心に88か所に及ぶDNAやRNAの抽出を行い、次世代シークエンスで遺伝子変異解析及びトランスクリプトーム解析を行っている。
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