研究課題/領域番号 |
20K18104
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
坂野 恵里 近畿大学, 医学部, 助教 (60580793)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 前立腺癌 / HDAC阻害剤 / 腫瘍免疫微小環境 / 複合免疫療法 / 遺伝子改変マウス / TP53異常 |
研究実績の概要 |
近畿大学医学部泌尿器科学教室は、これまでプレクリニカルモデルとして前立腺特異的PTENノックアウトマウス、PTEN/TP53ダブルノックアウトマウスを用いて前立腺癌の新規治療やバイオマーカー開発の研究を行ってきた。ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤が抗腫瘍効果以外に制御性T細胞などの免疫担当細胞へ作用することが示され、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の増強効果を期待した複合免疫療法の臨床試験が始まりつつある。また、HDAC阻害剤はTP53変異型で野生型よりも強い細胞増殖抑制作用を示すことが分かっており、比較的高頻度でTP53異常を認める前立腺癌に対する新たな治療選択肢となりうると思われる。本研究では、前立腺癌に対し、HDAC阻害剤は抗腫瘍効果や免疫調節作用を示し、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の効果を増強させるのか、さらに、TP53の遺伝子型により差があるのか、を評価する。具体的には、TP53の遺伝子型別にHDAC阻害剤の抗腫瘍効果を検討し、allograftモデルを用いて腫瘍微小環境、ICIとの併用療法の有用性を評価する。前立腺特異的PTENノックアウトマウスから作製した、PTEN/TP53ダブルノックアウトマウス、PTENノックアウト/TP53機能獲得変異マウスから樹立したマウス細胞株を、それぞれTP53野生型、欠失型、変異型細胞株として用いて、HDAC阻害剤のin vitroでの評価を行った。また、前立腺特異的PTENノックアウトマウスにHDAC阻害剤を単独投与し、前立腺における免疫応答因子の発現をリアルタイムPCRにて、脾臓や血液における細胞障害性T細胞、制御性T細胞、B細胞、マクロファージの発現をフローサイトメトリーにて評価し、HDAC阻害剤が腫瘍免疫微小環境に与える影響について検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TP53野生型、TP53欠失型、TP53変異型の細胞株を用いて、HDAC阻害剤entinostat, vorinostatの細胞増殖抑制効果を検討した。他癌腫で報告されているような、HDAC阻害剤のTP53変異に対する著しい増殖抑制効果は認めなかった。MDM2などTP53制御に関わる因子、IL-6/STAT3シグナル経路に関わる因子の遺伝子およびタンパク発現についてリアルタイムPCRおよびウエスタンブロットにて検討した。前立腺特異的PTENノックアウトマウスにHDAC阻害剤を単独投与し、HDAC阻害剤の抗腫瘍効果および腫瘍微小環境に与える影響を検討した。前立腺における免疫応答因子の発現をリアルタイムPCRにて、脾臓や血液における細胞障害性T細胞、制御性T細胞、B細胞、マクロファージの分布をフローサイトメトリーにて評価した。
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今後の研究の推進方策 |
in vitroではTP53変異型によるHDAC阻害剤の感受性の大きな違いは認めず、TP53野生型とTP53変異型について検討する。前立腺特異的PTENノックアウトマウス、PTENノックアウト/TP53機能獲得変異マウスから樹立したマウス細胞株をそれぞれC57/BL6マウスに移植し、皮下移植マウスモデルを作製する。これらのマウスにHDAC阻害剤vorinostatおよび抗PD-1/PD-L1抗体を投与し、腫瘍微小環境の評価、免疫担当細胞に与える影響をフローサイトメトリー、免疫組織染色、リアルタイムPCRにて評価する。
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