前立腺特異膜抗原(PSMA)リガンドと放射性同位元素68Gaを組み合わせたPSMA-PETによる前立腺癌転移、再発病変の高精度検出法の実用化、β線を放出する177Lu-PSMAリガンドによる内照射療法など、画像診断と治療を同時に実施可能なモダリティーが開発され、前立腺癌治療のパラダイムシフトが起きている。放射性同位元素に起因する被爆が問題であり、本研究では、低被ばくかつ治療効果が高い前立腺癌特異的な画像診断+治療モダリティーとして新規PSMA結合ペプチドとガドリニウム造影剤による中性子捕捉療法の確立を目指す。令和2年度は、L7ペプチド-Gd錯体(L7-Gd)の合成および皮下腫瘍マウスモデルにおけるL7-Gd投与後のMRIによるモニタリングを実施し、L7-Gdが腫瘍組織に集積し、造影効果を認めることを確認した。また骨転移腫瘍マウスモデル構築を試みた。令和3年度は、MRI集積データを踏まえ、腫瘍部位にL7ペプチド-Gd錯体が集積したタイミングで中性子捕捉療法を実施する計画を立てたが、中性子照射施設の遺伝子組み換え動物実験の施設整備が当初の予定度通り進まず中性子捕捉療法実験実施が不可能となった。また前年度に引き続き骨転移腫瘍モデルの構築を検討したが、骨転移腫瘍モデルの構築ができなかった。このため、PSMAを標的とした中性子捕捉療法実施が困難と判断し、令和3年度後半から、L7-ペプチドよりもPSMAに親和性が高い新たなペプチドをファージスクリーニングプールから、再検討し、得られたペプチド(R7ペプチド)とPSMAとの親和性検討や細胞内取り込みを検討した。R5年度後半に中性子照射施設における遺伝子組み換え動物実験施設整備が完了となる見込みであるため、本研究期間終了後に皮下腫瘍モデルにおける中性子捕捉療法の抗腫瘍効果検討を継続する。これらの研究成果を泌尿器科学会で発表を検討している。
|