研究課題
去勢抵抗性前立腺癌(CRPC)は予後不良であり、かつその病勢を測るバイオマーカーが確立されていない。CRPCの予後・治療効果を正確に反映するバイオマーカーの開発が急務である。CRPCでは腫瘍細胞のHeterogeneityが高く、一部病巣の生検では得られる情報が限られるため、Cell free DNA(cfDNA)の有用性が注目されている。我々はこれまで、各泌尿器科癌における糖鎖の解析を行い、新規バイオマーカーの開発を発表してきた。本研究では、この基盤を活用し、CRPCにおけるcfDNAを抽出し、去勢抵抗性獲得に関与しているアンドロゲン受容体遺伝子増幅(AR-amp)に加えGCNT2、β4GALNT4、C2GNT1といった糖転移酵素の発現、更にはPTENやTP53変異を定量的に解析することで、CRPCの去勢抵抗性獲得に関わる新規バイオマーカーを検討した。前立腺肥大症10例、限局性前立腺癌患者57例、ホルモン療法中の非CRPC患者97名、CRPC患者97名からcfDNAを抽出した。抽出されたcfDNAにおけるcfDNA総量、AR-ampを測定した。さらに、一部の症例ではやPTEN、P53の変異、各糖転移酵素(GCNT2、β4GALNT4、C2GNT1)、神経内分泌癌のマーカーであるMYCN-CNV、AURKA CNV、NCOR2も検討した。CRPC群と非CRPC群を比較すると、CRPC群でcfDNA総量、AR-ampが有意に増加していた。PTEN、P53の変異は絶対数が少なく、定量測定は困難であった。去勢抵抗性獲得に関連するとされるMYCN、AURKA、NCOR2にも有意な変化はなかった。しかし、CRPC群において糖転移酵素の発現β4GALNT4が有意に低下しており、全生存率が不良であった。糖転移酵素の発現量はCRPCの予後因子である可能性が示唆された。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
Cancers (Basel)
巻: 15(5) ページ: 1489-1489
10.3390/cancers15051489