研究課題
局所進行/転移性腎細胞癌の予後は多様であり、従来の病期・リスク分類では、その生物学的悪性度を十分に層別化できていない。はじめに申請者は、手術が施行された局所進行腎細胞癌77例の術前造影CT画像および摘出標本を用いて腎癌と正常腎実質の境界の画像所見および組織学的所見を解析し、同部の浸潤性境界が不良な予後と強く関連することを示した(Shimada W, Tanaka H, et al. Int J Urol. 2021; 28: 1233-1239.)。転移を有する腎細胞癌98例においても腎原発巣の造影CT画像を用いて類似の解析を行った結果、腫瘍と正常腎実質の浸潤性境界が全体の41%に認められ、これが腎癌死の独立したリスク因子であり、さらに現在広く用いられているIMDCのリスク分類と組み合わせることでその予測精度の向上に寄与することが示された(論文投稿中)。さらに申請者は、局所進行癌に限定しない根治的腎摘除が施行された非転移性淡明細胞型腎細胞癌333例の切除検体を病理学的に評価した。その結果、腎実質内浸潤/進展を40例(12%)に認め、内24例がpT3a以上、16例がpT1-2であった。多変量解析では、pT3a以上、脈管侵襲、WHO/ISUP grade 3-4、腎実質内浸潤/進展が再発の独立したリスク因子であり、ハザード比は腎実質内浸潤/進展で最も高値であった。腎実質内浸潤/進展を呈する症例と呈さない症例の腫瘍組織からDNAを抽出し、腎細胞癌において重要な遺伝子のvariant頻度を解析すると、腎実質内浸潤/進展を呈する症例ではSETD2およびTSC1遺伝子に変異を有する頻度が有意に高かった(論文投稿準備中)。以上から、組織学的な腎実質内浸潤/進展は従来のTステージとは独立して術後再発リスクに強く関連し、その背景にはよりaggressiveな遺伝子背景があることが示唆された。
3: やや遅れている
組織学的な検索は順調に進む一方、Radiomics解析を用いた腎実質内浸潤/進展の予測、あるいは不良な予後の予測を可能とするモデルの作成に難渋している。
様々なパターンでROI/VOIを設定してRadiomics解析を行うことで、精度の高い予測モデルの作成を試みる。
遺伝子解析をアクトメッド社の研究助成として実施することができたこと、その結果を踏まえて次年度に実施したい研究が生じたことから、次年度使用額が生じた。当初予定していたRadiomics解析に加え、腫瘍内の多様性に関する組織学的解析を予定している。
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