研究課題/領域番号 |
20K18110
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
中嶋 一史 金沢大学, 医学系, 協力研究員 (70792810)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ヒトパピローマウイルス / 男性 / 性感染症 / 自己採取 |
研究実績の概要 |
本研究で最も重要な検体採取は、主に性感染症患者が比較的多く来院する当院の関連施設・クリニックで予定されており、2020年4月から開始予定であったが、コロナ禍でだされた緊急事態宣言で該当クリニック受診患者の減少、クリニックでの診療簡素化による検体採取の見送り、市内の性感染症患者の減少のため、思うように検体が収集できなかった。2021年にはいってようやく検体採取が始められるようになり、現在、約20例程度が収集されている。HPV-DNA検査および細胞診検査はまだ実施できていない。今後早急に進めていきたいと考えている。 本検討の検体採取がコロナ禍の影響で遅れていることを受け、男性だけではなく、女性における自己採取法のHPV検査および細胞診の両者の有効性について検討した。HPV検出率は、医師が収集した検体(80%)よりも自己採取検体(85%)の方がわずかに高かった。一方、パパニコロウ細胞診の評価では、自己採取検体のLISILとHSILの検出率はそれぞれ10.1%と23.0%であり、医師採取検体のLSILとHSILの検出率は、それぞれ10.7%、25.9%であり、自己採取検体のサンプルの方が有意に低かった。HPV感染スクリーニングおよびHPV感染の経過観察は自己採取で十分に検査可能であるが、LSIL以上の細胞診における経過観察は医師採取による検体で行うべきであると考えられた。 また、別に検討していた女性の尿検体を用いたHPV感染のスクリーニングの有用性についての研究を別途実施した。子宮頸癌患者(手術症例)を対象にし、子宮頚部(擦過)・外陰部(擦過)・初尿検体におけるHPV検出率について比較検討した。現在、子宮頸癌患者40例の子宮頚部、外陰部、初尿検体を収集することができ、それぞれの検体におけるHPV陽性例は、子宮頸部 22例、外陰部 21例、初尿 18例であった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本検討では、当院および関連施設においてSTIs外来に来院した男性患者を対象に、医師による採取と自己採取による2種類の亀頭擦過検体におけるHPV-DNA検出率・HPV型分布と細胞診評価について比較検討し、自己採取法によるHPV検査の有用性を明らかにすることを目的としていた。本研究で最も重要な検体採取は、主に性感染症患者が比較的多く来院する当院の関連施設・クリニックで予定されており、2020年4月から開始予定であったが、コロナ禍でだされた緊急事態宣言で該当クリニック受診患者の減少、クリニックでの診療簡素化による検体採取の見送り、市内の性感染症患者の減少のため、思うように検体が収集できなかった。2021年にはいってようやく検体採取が始められるようになり、現在、約20例程度が収集されている。新型コロナワクチン接種が進み、コロナ感染減少が認められれば検体採取が進み、同時にHPV-DNA検査および細胞診評価をすぐに行える体制にはなっている。 本研究があまり進まなかった時期に、代替え検討として以前収集した女性の自己採取検体の細胞診評価、女性の尿検体を用いたHPV検査法の評価などの追加検討をおこなった。
|
今後の研究の推進方策 |
当院の関連施設であるクリニックには検体収集を進めてもらうとともに、予定していた施設以外にも検体採取を依頼したいと考えている。また、本検討では性感染症の患者を対象としていたが、われわれの過去の大規模調査(本邦における泌尿器科を受診した男性629例を対象とした調査)において、男性の亀頭検体におけるHPV検出率は24.1%(中嶋一史,他;日性感染症学会誌2013; 24:133-9)と、若年・中年男性もある程度のHPV感染率が報告されているため、当院の男性外来および不妊外来を受診した男性も対象として検体採取を行いたいと考えている。採取された検体は早急にHPV-DNA検査および遺伝子型判定を実施する。 また追加で、女性のHPVスクリーニングとして尿検体を使用することの有用性について、子宮頸癌の手術患者を対象に、子宮頚部・外陰部・初尿検体におけるHPV検出率について検討を行ったが、各検体のHPV遺伝子型の一致率を検討するとともに、セルブロックを作成し細胞診の評価をおこないたいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究における検体採取は、主に性感染症患者が比較的多く来院する当院の関連施設・クリニックで予定されており、2020年4月から開始予定であったが、コロナ禍でだされた緊急事態宣言で該当クリニック受診患者の減少、クリニックでの診療簡素化による検体採取の見送り、市内の性感染症患者の減少のため、思うように検体が収集できなかった。そのため研究が思うほど進まなかったため、余剰金は次年度の必要物品の購入費に重点する予定としている。まだコロナ禍の影響はあるものの、現在はゆっくりと検体収集が始まり、来年度には研究を早急にすすめることができるであろうと考えている。
|