研究実績の概要 |
CRISPR/Casシステムを用いて、B因子ノックアウトラット作成を行なった。まず、B因子のガイドRNA(gRNA)を設計した。その設計に基づいたgRNA、Cas発現ベクターを調製し、続いて作成した発現ベクターをFisher系ラット受精卵にマイクロインジェクションし、これを仮親の卵管へ移植した。目的の変異が起きた産仔のスクリーニングを行い、目的の変異の導入が確認されたものを抽出し、繁殖を進めてB因子単独欠損(-/-)ラットを作成した。スクリーニングには、産仔の耳組織を用いて、PCRもしくはシークエンスにより行なった。B因子単独欠損(-/-)ラット、野生型ラットに対して、ラット胎仔尿生殖洞を移植することで、前立腺肥大症モデルラットを作成した。移植3週間後に、肥大前立腺組織を採取して、重量や分子生物学的評価を行なった。その結果、B因子欠損ラットでは、野生型ラットに比較して前立腺重量が有意に減少していたが、欠損ラットでは体重の減少も認められた。さらに、組織学的評価では、特に前立腺間質成分の増殖が抑制されていた。さらに、Western blottingの結果、補体各成分(C1q, C3, MBL, C5b-9)の発現が、B因子欠損ラットで有意に低下していることがわかった。免疫組織化学染色では、特にC1q、C3、MBL、C5b-9は間質優位に局在しているが、欠損ラットではC3, C5b-9の発現が低下していた。
|