研究課題/領域番号 |
20K18122
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
永井 隆 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 臨床研究医 (20813447)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 前立腺癌 / ナノ粒子 |
研究実績の概要 |
単層カーボンナノホーン(single-walled carbon nanohorn: SWNH)を用いることで、酸化鉄(Fe3O4)および前立腺膜抗原(PSMA: prostate specific membrane antigen)を結合させ、腫瘍特異的な温熱療法の治療の開発を試みる。 初期段階として酸化鉄含有SWNHによる温熱治療効果の検証を行ったので報告する。 ① SWNH+Fe3O4のin vitroでの実験; SWNH+Fe3O4の毒性実験を行った。ヒト去勢抵抗性前立腺癌細胞株(22Rv1)を用いて、SWNH+Fe3O4の濃度条件を変えて、WST assayを用いて毒性を評価した。濃度依存性に細胞毒性が見られた。 ② SWNH+Fe3O4の治療効果の検証: 動物実験による温熱療法効果を検証するために、モデル動物として前立腺癌皮下移植モデルマウスを用いた。6週齢雄ヌードマウスの背部にヒト去勢抵抗性前立腺癌細胞株 22 Rv1を皮下移植した。コントロール (n=6) および加温群 (n=6) とし、加温群のモデルマウス腫瘍部位にSWNH+Fe3O4を300μL局所注入した。その後、コイル型交流磁場照射装置(図)を用いて、交流磁場下におけるSWNH+Fe3O4の発熱を試みた。腫瘍内の温度は、いわゆるmild hyperthermiaで定義される42℃-46℃で維持し、30分間の加温を行った。また、同時に直腸温の計測も行った。両群の経時的な腫瘍サイズの計測を行い、温熱治療効果の検証を行った。現在腫瘍サイズおよび病理学的変化の検証を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
酸化鉄含有SWNHの分散性および発熱性の両者を維持する物質の精製に難渋した。高い発熱効率を維持したまま、分散性を得た物質の精製のために鉄濃度の調整や新たな被覆ポリマーなどを検討していたため、動物実験に至るまでの計画が遅延した。
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今後の研究の推進方策 |
皮下移植モデルマウスおよび加温のシステムの状況は整っている。加温のための交流磁場照射装置はコイル型のものを準備してあり、他の磁性ナノ粒子での発熱やそれによる動物実験での発熱・腫瘍退縮は確認できている。 カーボンナノホーンを用いた磁性ナノ粒子の開発を進めていき、今後動物実験を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
単層カーボンナノホーンに炭素量子ドットを内包した複合体(SWNH-MNP-CQDs)にさらに抗癌剤を内包した複合体を用いて前立腺癌に対する温熱療法および化学療法、光線力学療法を組み合わせた複合的癌治療の効果を検証する研究計画である。計画自体は順調な滑り出しであったがCOVID-19による通常の医療業務が大幅に変更となり、予定していた研究を進めることができなかった。このため次年度使用が生じた。次年度は更に研究を加速させin vivoでの効果の検証をしていきたい。
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