研究課題/領域番号 |
20K18122
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
永井 隆 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (20813447)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 温熱療法 / ナノ粒子 |
研究実績の概要 |
温熱療法の効果に関わる因子としてHSP70というタンパクが関わることが知られていたが、近年はHIKESHIという新たなタンパクが発見され注目されている。これは熱ストレスに応じてHSP70を核内へ移行し、タンパク修復を行うとされるタンパクである。そこで前立腺癌の温熱療法につき vitroおよびvivoで検証し、HIKESHIの関与について検証をした。 In vitroでは、ヒト去勢抵抗性前立腺細胞株22Rv1を用いて、熱ストレスにおける生細胞数の変化およびWestern blottingでのタンパク発現を解析した。熱ストレスにおける時間依存性の生細胞数減少を認め、WBではHSP70およびHIKESHIの発現を確認した。また、siRNAをもちいてHIKESHIをknockdownしたうえでの熱ストレスによる生細胞数の変化を検証し、negative controlよりも有意に生細胞数減少がみられた。ヒト去勢抵抗性前立腺癌細胞株において、HIKESHIのknockdownによる温熱療法効果増強が示された。 In vivoではカーボンナノホーン(CNH)および酸化鉄を用い、分散性および発熱性の高い磁性ナノ粒子開発をした。酸化鉄を含むナノ粒子(磁性ナノ粒子)が交流磁場により発熱する特性を活かした磁性ハイパーサーミアで皮下移植モデルマウスにおける治療効果を確認した。 これらのことから、ヒト去勢抵抗性前立腺癌細胞22Rv1においてin vitroおよびin vivoでの温熱療法による治療効果を認めた。また、熱耐性に関わるHIKESHIをknockdownすることで温熱療法効果の増強を認め、治療標的部位になる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
去勢抵抗性前立腺癌細胞株に対するin vitroおよびin vivoでの温熱療法効果を確認し、in vivoではCNHを用いた磁性ナノ粒子開発およびその温熱療法効果を確認できた。現在は抗癌剤を内包する磁性ナノ粒子開発に取り組んでおり、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は協力研究機関とともに磁性ナノ粒子開発をさらに進めていく。in vitroでの抗癌剤放出量や交流磁場照射による放出量の増加などを検討し、drug deliveryとしてのCNHの効果を検証する。 安定したナノ粒子精製を確立したうえで、in vitroでの細胞レベルでの抗癌作用を検証し、動物実験へと研究を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
単層カーボンナノホーンに炭素量子ドットを内包した複合体(SWNH-MNP-CQDs)にさらに抗癌剤を内包した複合体を用いて前立腺癌に対する温熱療法および化学療法、光線力学療法を組み合わせた複合的癌治療の効果を検証する研究計画である。計画自体は順調な滑り出しであったがCOVID-19による通常の医療業務が大幅に変更となり、予定してていた研究を進めることができなかった。また国際・国内学会出張も計画していたが、出張することもできなかった。このため次年度使用が生じた。最終年度として、in vivoでの効果の検証をしていきたい。
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