研究実績の概要 |
申請者は、癌治療の新たなツールとして、主要組織抗原非拘束性に抗腫瘍効果を発揮し容易に体外大量増幅培養可能なγδT細胞に着目し研究継続している。 本研究では、投与したγδT細胞の免疫疲弊に着目した検討を行う。癌微小環境下 での免疫疲弊に関与する細胞分子メカニズムの一端を明らかできれば、漸新かつ先駆的な癌微小環境に対する免疫アプローチが構築される事が期待される。本年度申請者らのグループではγδT細胞がPD1/PDL1の経路に抑制されることなく抗腫瘍効果を発揮することを報告した。(Tomogane M, Shimizu T, Ashihara E et al. Human Vγ9Vδ2 T cells exert anti-tumor activity independently of PD-L1 expression in tumor cells. Biochem. Biophys. Res. Commun. 2021) 前年度は患者由来の末梢血単核球を用いてγδT細胞細胞の培養を開始した。膀胱癌担癌患者での末梢血を使用したγδT細胞の培養を合計5名で実施し、膀胱癌細胞株2種類(UMUC3,TCCSUP)に対してのγδT細胞抗腫瘍効果検討を2名の患者で実施した。γδT細胞の11日での培養増幅効率は良好であった(287.9倍-3267.6倍)が、抗腫瘍効果は健常人末梢血由来のγδT細胞と比較するとmildであった。γδT細胞の免疫疲弊に関与する分子の特定として培養開始後day0,5,7,11の4点でγδT細胞の表面に発現する抑制性分子、活性化分子( Trem-1,B7-H4,TIM-3,NTN3A1,CD107a,IFNγ,CD107b)の発現の定量化、経時的変化をフロサイトメトリーで実験実施し、γδT細胞に発現する抑制性分子としてTIM-3 (T-cell immunoglobulin mucin-3)がγδT細胞の培養期間を通じて高発現していた。同分子のγδT細胞の免疫疲弊に関与する可能性について研究を継続実施中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度は免疫抑制性細胞CAF,TAMを人工作製する作業を行った。TAMへ分化したことの確認作業はWestern Blotting法でTAMに特異的に発現するCD204の定量を行い、試薬薬濃度を変更しながら最適な条件を模索した。 CAFの人工作製については、細胞株NIH3T3にTGFβ(20 ng/mL)を添加して48時間後にCAFへ分化したことの確認作業はWestern Blotting法でCAFに特異的に発現する αSMAの発現で確認しているが同じく結果の再現性条件を複数回振り、試みたが再現性が乏しいため、実験の方針を変更することにした。 免疫疲弊に関与するチェックポイント分子のγδT細胞での発現を解析し、同定した分子に対する中和抗体の添加による抗腫瘍効果の変化を探求していく。γδT細胞の癌細胞の抗腫瘍効果にはγδT細胞の放出するPerforin,GranzymeBが関与することが知られる。癌細胞とγδT細胞の共培養時にPerforin,GranzymeBのブロック抗体を添加することによる抗腫瘍効果の変化を実験していく。
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