研究実績の概要 |
我々は癌免疫療法の有望な治療候補としてγδT細胞に注目してこれまで研究を展開し継続している。本研究課題では、膀胱癌担癌患者の培養実施および抗腫瘍効果を確認し、投与したγδT細胞の癌微小環境下での免疫疲弊に関与する細胞分子メカニズムに着目した検討を行った。膀胱癌担癌患者5名でのγδT細胞のex-vivo培養の結果、膀胱癌患者末梢血での11日間培養後のγδT細胞への分化誘導(中央値:79.4% 範囲:30.6%-87.8%)、増幅効率(中央値:339.6倍 範囲:247.9倍-3267.6倍)ともに、5名全員で良好であった。続いて培養した同細胞3名分を用いて膀胱癌細胞株UMUC3,TCCSUPに対する抗腫瘍効果をフローサイトメトリー法で検討した。結果、健常人末梢血由来の培養後のγδT細胞と比較すると抗腫瘍効果はmildであった。11日間の培養経過中のγδT細胞表面の分子マーカー(Trem1, B7-H4, Tim-3, BTN3A1, CD107a/b, IFNγ)の経時的発現を培養day0, 2,7,11で検討した所、健常人と担癌患者末梢血ともに培養後のγδT細胞にTim-3が高発現していた。同定したTim-3の免疫疲弊分子としての役割についてγδT細胞に、Tim-3のブロック抗体とGalectin-9を用いて検討した。抗腫瘍効果の変化をフローサイトメトリー法で検討した。E:T比10:1において抑制性分子Tim-3(anti-CD366)抗体を処置することでγδT細胞の抗腫瘍効果が有意に増強することがTCCSUP株において示された。以上から抑制性分子Tim-3ブロック抗体を使用するとγδT細胞の効果が増強する事象をin vitro実験系で示せた。これらの結果を、担癌モデルマウスを用いてin vivo実験系での再現性につき今後予定していく。
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