精巣腫瘍の診断、リスク分類、治療後の経過観察において腫瘍マーカーは重要である。しかし、既存のマーカーは6割程度の精巣腫瘍患者で上昇を認めるのみであり、より鋭敏な新規バイオマーカーの開発が必要である。弘前大学泌尿器科では血清N型糖鎖構造の網羅的質量解析により、既存マーカーを凌駕する精巣腫瘍診断バイオマーカーとして有用な糖鎖変異を同定したが、質量分析法にかかる時間とコストが臨床応用を困難なものとしていた。本研究は、N-結合型糖鎖を短時間で網羅的に解析可能なキャピラリー電気泳動糖鎖解析装置(GlyQ)を用いて既存腫瘍マーカーを凌駕する精巣腫瘍バイオマーカーの臨床応用を目指すものである。 令和2年度は、保存されている精巣腫瘍患者血清試料(約50検体)、健常血清試料(100検体以上)においてコア蛋白の候補である免疫グロブリンを抽出し、それを修飾しているN 型糖鎖をGlyQ にて網羅的な解析を行い、精巣腫瘍の診断・予後診断に有用な糖鎖構造を定量的に測定する事ができた。 令和3年度は、追加の精巣腫瘍血清資料(20検体以上)の解析の追加した。また、Deep learningアルゴリズムを用いたソフトウェアを使用することで、診断能・予後予測能を高めることが可能であった。 ハプトグロビンやオルソムコイドは分離抽出困難であり、今後の検討課題とする。
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