研究実績の概要 |
筋層非浸潤性膀胱癌(NMIBC)は再発率が高く、術後定期的な膀胱鏡検査などが必要となる。我々は尿路上皮癌治療後でも癌特異的遺伝子変異が尿中cell-free DNA (cfDNA)中に検出可能で、膀胱癌再発と関連することを報告してきた。そこで膀胱癌患者の正常粘膜にすでに存在する遺伝子変異(field change)が腫瘍再発と関連すると考え、field changeの網羅的遺伝子発現解析を行い、膀胱癌発生メカニズムの解明を行うことを目的とする。申請者は既に55例のNMIBC患者398か所の膀胱生検のホルマリン包埋切片からDNA抽出し、TERT promoter変異に関しては解析を終了し膀胱の非悪性尿路上皮に存在するTERT promoter変異が膀胱内再発と有意に関連することを報告し(Hayashi Y et al. Mol Oncol, 2020)、尿路上皮癌におけるTERT promoter変異の生物学的重要性について総説を報告した(Hayashi Y et al. Front Oncol, 2021)。さらに、膀胱生検サンプルや腫瘍サンプルから抽出したDNAを癌関連遺伝子パネルをターゲットシークエンスを行い、膀胱癌腫瘍形成メカニズムや癌ゲノムを中心とした多段階発癌モデルの分子生物学機構の解明に向けて解析を進めている。その中でTERT promoter変異以外にFGFR3変異などがNMIBCの腫瘍形成に重要な役割を果たしていることが示唆された(Hayashi Y et al. in preparation)。
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