研究実績の概要 |
膀胱癌の新規治療標的およびバイオマーカー探索を目的とし、膀胱癌患者の尿中および癌組織分泌エクソソームを用いたプロテオミクスを行い、膀胱癌と健常者のみならず良性疾患による血尿や膀胱炎から膀胱癌を判定可能な膀胱癌特異的尿中エクソソームタンパクXを同定した。膀胱癌におけるタンパクXの果たす役割は明らかではない。本研究では膀胱癌におけるタンパクXの機能解析および、エクソソームを介してタンパクXが癌微小環境に与える影響について検討を行っている。 まず、5種類の尿路上皮腫瘍細胞株(T24, J82, TCC-SUP, UMUC-3, 5637)における培養細胞内のタンパクXの発現をPCR、ウエスタンブロットで定量したところ、5637細胞、T24細胞において高発現していた。5637細胞、T24細胞においてsiRNAを用いてタンパクXをノックダウンしたところ、膀胱癌細胞株の増殖能、遊走能、浸潤能の抑制が確認され、タンパクXが膀胱癌において増殖能、遊走能、浸潤能に関与していることが示唆された。 次に、5637細胞、T24細胞の培養上清から回収したエクソソームにもタンパクXが高発現していることを確認した。さらに、タンパクX低発現であるHEK293細胞株にタンパクXを強制発現させ、タンパクX高発現エクソソームが安定して回収可能な実験系を確立した。 今後、癌微小環境を模した各細胞(ヒト臍帯静脈内皮細胞、線維芽細胞、癌細胞など)に、上記タンパクX高発現エクソソーム(5637細胞、T24細胞、タンパクX強制発現HEK293細胞の培養上清由来エクソソーム)を添加し、タンパクXがエクソソームを介して癌微小環境に与える影響とその機序を解析する予定である。
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