未だ増加傾向にある末期腎不全患者において必ず生じる合併症である皮膚症状(色素沈着・乾燥・痒み)は患者のQoLに重大な影響を与える病態である。生体腎移植により色素沈着は速やかな改善を認める事から、原因として一般的な色素沈着物質・メラニンではなく、透析では除去できない尿毒症物質が想定されるが、原因物質を特定した報告はない。透析患者が腎移植件数を圧倒的に上回る現在において、治療法の開発は喫緊の課題であり、本研究では末期腎不全における皮膚色素沈着原因物質を包括的メタボローム解析を用いて網羅的な同定を目指した。 今回の研究では、腎移植レシピエントの協力を得て皮膚明度の術前・術後推移の分光測定器を用いた測定および、腎移植前後の皮膚組織を同意の上採取し、プロテオーム解析を行った。術度1か月での皮膚明度は術前と比較し顔面、上腕、下腿で有意な上昇を認めた。腹部においても統計的有意差には達さないものの、明度が上昇する傾向を認めた。皮膚の水分量においても改善する傾向を認めた。プロテオーム解析では、腎移植後にケラチン・ファミリーのtypeⅠ、typeⅡの数種類やElongin-B、AMBPなどの発現が低下している一方、FAM98Cなどの発現上昇がみられた。
これらの結果は、腎移植前後に有意に皮膚の明度が改善することを数値的に示し、移植前に高発現している蛋白・物質を紐解くことで、皮膚色素沈着原因物質を除去し、末期腎不全患者のQoLを改善し得る透析除去カラムの開発に寄与すると考えられる。
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