研究課題/領域番号 |
20K18142
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
後藤 景介 広島大学, 病院(医), 助教 (30784251)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 前立腺癌 / 内分泌療法 / HMGB1 |
研究実績の概要 |
[1]免疫組織化学を用いた前立腺がんにおけるHMGB1発現解析 前立腺全摘除術を施行された前立腺癌252症例を用いてHMGB1の発現を免疫組織科学で評価した。腫瘍細胞の細胞質と核の両方に強く発現したものを陽性とみなし、HMGB1の発現とステージや組織学的悪性度(グリソンスコア)、病理学的事項との関連を調べた。HMGB1の発現はTステージ(p<0.0001)、グリソンスコア(p=0.0009)、前立腺外進展(p=0.0001)、リンパ管浸潤(p=0.0001)、静脈浸潤(p=0.0120)、神経周囲浸潤(p=0.0001)、精嚢浸潤(p=0.0002)と有意な関連を示した。この252症例における前立腺全摘除術後の再発との関連をカプランマイヤー法で調べたところ、HMGB1陽性例で有意に予後不良であった(p=0.0280)。診断時に転移を有する転移性前立腺癌70症例の前立腺生検標本を用いてHMGB1の免疫組織化学を行い、一次内分泌療法後の再発に関し調べたところ、HMGB1陽性例で有意に生化学的再発が多く認められた(p=0.0005)。以上のことから、HMGB1の発現は前立腺癌における内分泌療法抵抗性と関連があると考えられた。 [2]HMGB1阻害下での前立腺がん細胞の増殖能、運動能の解析 前立腺癌細胞株LNCaP、DU145を用いてHMGB1の発現をsiRNAによりノックダウンし、細胞増殖能をMTTアッセイで評価した。HMGB1の発現抑制をウェスタンブロット法で確認、HMGB1のノックダウンにより有意に細胞増殖能が抑制された。以上よりHMGB1は前立腺癌における細胞増殖に寄与することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前立腺癌におけるHMGB1の発現解析を行い、前立腺癌組織におけるHMGB1の発現が悪性度や進展と関連することが明らかとなった。また転移性前立腺癌における一次内分泌療法の奏功性との明確な関連を示すことができており、去勢抵抗性獲得との関連を示唆する知見が得られた。さらにHMGB1と細胞増殖能との関連を裏付ける結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
HMGB1と細胞増殖との関連について他分子の発現との関係を調べる予定である。今後は抗アンドロゲン剤や抗癌剤感受性との関連を調べるとともに、HMGB1阻害剤を用いた実験を進めていく計画を立てている。
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次年度使用額が生じた理由 |
Covid-19流行により学会参加のための旅費として計上していたものを中心に次年度使用額として計上した。次年度使用額374,218円は免疫組織化学、ウエスタンブロットに用いる抗体試薬や論文投稿費用に充てる予定である。
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