研究実績の概要 |
淡明細胞型腎細胞癌(ccRCC)における腫瘍壊死の存在は独立した予後増悪因子とする報告が過去になされたが、その背景となる分子機構は未だ不明である。The DEAD-box helicase 41(DDX41)は、外来由来や自己の壊死細胞由来のdsDNAに対するDNAセンサーの一つであり、その発現は自然免疫に関わるSTING経路を賦活化する。悪性腫瘍においてSTING経路の賦活化は癌抑制的に機能するが、DDX41の発現は固形腫瘍において腫瘍促進的に働くとの報告もあり一定の見解を得ない。我々は、ccRCCにおける腫瘍壊死がDDX41の発現を介して予後増悪に繋がるのではないかとの仮説を立て、TCGAデータセットおよび自験例の解析を行った。その結果、我々の検討においても腫瘍壊死の存在は独立した生命予後増悪因子であり、また壊死のない症例と比較してDDX41の発現レベルが有意に高かった。加えてDDX41の高発現自体が生命予後の増悪因子であった。次に2種類のccRCC細胞株(VHL野生型または欠失)を用いて、pCDHウイルスベクターによるDDX41過剰発現株の作成およびsiRNAによるDDX41の一過性欠失株の作成を行い、解析した。その結果、VHL欠失細胞でのみDDX41過剰発現下において細胞増殖能の亢進を確認した。CcRCCはVHLの機能欠失を主な特徴とする。我々は、VHL機能欠失下でのみ、DDX41の高発現がケモカインCXCL1, CXCL2, CXCL3の発現を惹起しすることで腎細胞がんにおける炎症の上昇を引き起こす事を明らかにした。以上からDDX41の発現はVHL変異と強調してはじめて下流の炎症関連因子の脱制御を引き起こすと考えられた。
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