腎移植レシピエント,ドナーのデータベースを充実させて解析を行った.
まず,現行のガイドラインにおける慢性活動性T細胞関連拒絶の診断の妥当性,臨床経過についての検証を行った.慢性活動性T細胞関連拒絶と診断された症例は,急性T細胞関連拒絶と診断された症例と比較して予後不良であった.先行拒絶を経験している症例や,BKウイルス腎症を先行している症例が多かった.慢性活動性T細胞関連拒絶と診断されたが,臨牀情報と併せて,最終的に尿路感染症と診断された症例も多々見られた.つまり,急性型のT細胞関連拒絶に比し,慢性活動性T細胞関連拒絶は,病変が慢性化することにより,予後との関連は強くなるが,拒絶以外の要因(感染症)でも同様の組織傷害を来す可能性が示唆された.免疫染色の結果からは,合併症の有無による違いを見出すことはできなかったが,合併症例では治療抵抗性の症例が多く,予後不良因子として重要である可能性が示唆された. また,現行の境界型拒絶反応の診断基準についても検証を行い,旧診断基準に比し,その後拒絶に進展するリスクが高い可能性が示唆された. 追加研究として,腎移植ドナーの0時間生検組織についても検討を行った.喫煙と腎傷害についての関連性について検討を行った.喫煙患者においては,腎糸球体肥大が有意であり,細小動脈病変の硝子様変化が著明であった.この結果からは,酸化ストレスや,NO阻害陰性によって,細小動脈傷害に惹き起こされ,糸球体高血圧を介して腎組織傷害を引き起こす可能性が示唆された.
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