研究課題/領域番号 |
20K18146
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
大迫 洋一 鹿児島大学, 医歯学総合研究科, 客員研究員 (60793354)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 膀胱癌 / PHGDH / セリン / メチル化 |
研究実績の概要 |
癌細胞における代表的な代謝リプログラミングであるワールブルグ効果は50年以上前にOtto Warburgが報告した現象で、癌細胞は有酸素下でもミトコンドリアの酸化的リン酸化よりも解糖系でATPを産生する現象である。しかし、未だにこの代謝リプログラミングの真の目的、並びにメカニズムに関してもコンセンサスが得られるまでには至っていない。我々は以前、治療抵抗性癌において解糖系の基質をセリン合成経路へ変換するPHGDHが活性化することを同定し、治療抵抗性の獲得に代謝リプログラミングが寄与することを報告した。一方、膀胱癌の臨床統計解析において、PHGDHの発現は悪性度に相関し、更にPHGDHは独立した予後不良因子であることが判明した。そこで、膀胱癌におけるPHGDHを標的とした新規治療法の可能性の探索と同時に、PHGDHの発現機序の解明を本研究の目的とした。 本年度の成果としては、膀胱癌におけるPHGDHを標的とした新規治療法の可能性を論文化したことが挙げられる。内容としては膀胱癌細胞株を用いて、PHGDHのsi-RNAや阻害剤を投与したところアポトーシスを介した腫瘍抑制効果をin vitro並びにin vivoにおいて示すことができた。更にPHGDHの発現にメチル化が関係していることを初めて示した。これらの結果より、膀胱癌におけるPHGDHを標的とした新規治療の可能性とPHGDHの発現機序の一端を報告することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
実験が順調に進み、膀胱癌におけるPHGDHを標的とした新規治療法の可能性を論文化できたためである。
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今後の研究の推進方策 |
PHGDH亢進を認める膀胱癌におけるセリン合成経路上にある物質の変化を探索する。具体的には、メタボロミクス解析やフロックス解析により、PHGDHの発現の相違によるセリン合成経路並びにその代謝産物の変化を評価し、細胞内におけるセリン合成経路活性化の意義を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は新型コロナの影響で参加を予定していた学会が中止となり、旅費が使用できなかった。また、同様の理由で実験が予定通りに進まず購入を予定していた物品の納入ができなかった。次年度は、学会にも参加し、メタボロミクス解析やフロックス解析により、PHGDHの発現の相違によるセリン合成経路並びにその代謝産物の変化を評価し、細胞内におけるセリン合成経路活性化の意義を解明する。更に、PHGDHの発現にメチル化が関係していることを今回初めて確認したが、今後は膀胱癌細胞に限らずPHGDHの発現が高い検体と低い検体を用いて検証し、PHGDHの発現機構の解明のみならず、癌細胞の代謝リプログラミングの解明につなげたい。そのため、次年度も実験費が必要である。
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