研究課題
癌細胞における代表的な代謝リプログラミングであるワールブルグ効果は50年以上前にOtto Warburgが報告した現象で、癌細胞は有酸素下でもミトコンドリアの酸化的リン酸化よりも解糖系でATPを産生する現象である。しかし、未だにこの代謝リプログラミングの真の目的、並びにメカニズムに関してもコンセンサスが得られるまでには至っていない。我々は以前、治療抵抗性癌において解糖系の基質をセリン合成経路へ変換するPHGDHが活性化することを同定し、治療抵抗性の獲得に代謝リプログラミングが寄与することを報告した。一方、膀胱癌の臨床統計解析において、PHGDHの発現は悪性度に相関し、更にPHGDHは独立した予後不良因子であることが判明した。そこで、膀胱癌におけるPHGDHを標的とした新規治療法の可能性の探索と同時に、PHGDHの発現機序の解明を本研究の目的とした。本年度の成果としては、当科でgemcitabine耐性膀胱癌細胞株(GEM-R-BOY, GEM-R-T24)を樹立し、それを用いて解析をしたところ、gemcitabineの耐性化にmiR-99a-5pとその標的遺伝子であるSMARCD1が関与していることを論文化したことが挙げられる。更に、gemcitabine耐性膀胱癌細胞株を含めて以前当科で樹立したcisplatin耐性膀胱癌細胞株を調べたところ、それらの耐性細胞においてPHGDHの発現が亢進していることが確認され、膀胱癌の治療抵抗性獲得に代謝リプログラミングが寄与することが示唆された。
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Molecular Oncology
巻: 16 ページ: 1329~1346
10.1002/1878-0261.13192