研究課題
尿路に重大な異常を示す先天性疾患の治療方法の確立に、多くの困難が伴っている。特に尿路の低形成に対して、手術治療の効果は限定的であり、根本的にそれらの間葉層、平滑筋層を再建することが求められている。本研究では、尿管の間葉、平滑筋層の分子発生メカニズムの解析に基づき再生医学研究を展開する。小児泌尿器科領域において、CAKUT(Congenital anomalies of kidney and urinary tract:先天性腎尿路異常)を含む尿路異常の根本的治癒に向けて、尿路系に関する様々な再生医学研究を行った。先端的治療を行う前に、尿路の状態を解析するためのassay系が必要となる。マウスの尿路については、視認では確認できない。故にin vivoで尿路を評価するために、実験系が必要となり、2020年度は世界で初めてマウスの尿路の評価系を作成した。マウス尿路の評価として、インドシアニングリーン (ICG)ならびに造影剤を用いて、尿路の描出を可能とした。下部尿路に関してはICG注入では描出が困難であったが、造影剤を用いて、描出することができた。マウスの尿道には、憩室状の構造が確認され、同領域を境にして、ヒトでの解剖と類似するように、前部尿道、後部尿道様の構造が確認された。上部尿路に関しても同様に、造影剤を用いて評価することが可能であった。これらの結果により上部尿路の経時的な評価、実験系が樹立されつつある。国際論文業績として、Scientific Reports誌を含む数報を発表した。
2: おおむね順調に進展している
2020年度は、治療の評価系としてのassay系の樹立に関する実験が主体であった。マウス尿路の評価として、インドシアニングリーン (ICG)ならびに造影剤を用いて、尿路の描出を可能とした。下部尿路に関しては、論文報告を行い、上部尿路に関しても、assay系を樹立しつつある。
2021年度は、2020年度で報告した評価系をさらに発展させて、尿の漏出による組織の損傷について、世界的にエビデンスが不十分な状態であるため、その状況を打開するために、評価、検討する。Hedgehog信号伝達系については2021年度にマウス尿路系での機能解析をさらに充実して行う。続いて、尿路系間葉細胞において実効的に機能すると推察されるBmp(骨形成因子)シグナルに関しては、Bmp蛋白、Bmp阻害因子であるNoggin蛋白等をソノポレーションで導入し、細胞の増殖効果をモニターし、間葉培養系を検定する。さらに将来的には未分化間葉系幹細胞の投与について準備を開始する。
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Biology of Reproduction
巻: 104 ページ: 875~886
10.1093/biolre/ioab011
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