研究課題
概日リズムは一日単位のリズムであり、視床下部の中枢時計と各臓器内の末梢時計が同期して形成され、基本的な生体活動を維持している。一方で女性は月経周期という月単位の生殖リズムを有しており、子宮や卵管の収縮リズムはこれに連動して変化する。子宮収縮は月経や分娩に必須の運動であり、その異常は月経困難症、子宮内膜症、着床障害さらに早産などに関与すると推察される。我々の研究は子宮収縮が子宮末梢時計の制御を受けており、様々な産科・婦人科疾患が時計遺伝子が原因の一つである可能性を明らかにすることである。 すでに開発済みのEx vivoでの子宮収縮が解析可能な実験系を用いてWTマウスと子宮特異的Bmal1KOマウスを比較し、子宮収縮のリズム、頻度に差があるかどうかを解析した。平滑筋収縮は“振り子運動”、“分節運動”、 “蠕動運動”の3つがあるが、特に蠕動運動に関して注目した。しかしEx vivoでの子宮収縮運動に関しては両者に明らかな差が見られなかったため、今後はIn vivoでの子宮収縮運動の解析を検討している。また、消化管の蠕動運動は外層の縦走筋と内層の輪状筋の正確な同期が必要であり、近年時計遺伝子による調節を受けていると報告されている。我々は子宮と消化管が共に内輪外縦構造から成るという組織学的類似性に着目し、本研究の過程で子宮の概日リズムが消化管と同様に食事行動に制御されるという新たな事実を明らかにした。この結果は、不規則な食事が子宮概日リズムの異常を介して産婦人科疾患の発症を誘発する可能性を示唆している。今後は時計遺伝子発現と子宮収縮運動との関連性を明らかにし、将来的には食事タイミング指導による、子宮異常収縮によって引き起こされる婦人科疾患の予防を目指していく。
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Current Developments in Nutrition
巻: 5 ページ: -
10.1093/cdn/nzab064