研究課題
本研究の研究実施計画に沿って詳述する。・胎児性癌の発生原因は卵巣組織内の不適切なリプログラミングである証明:モデル動物内にこの腫瘍を発病させる実験に成功したので、さまざまな切り口で腫瘍発生を観察した。生殖細胞が腫瘍化する瞬間をモデル動物臓器内で前方視的に捉えて、胎児性癌の発生原因と、不適切な卵巣組織内でのリプログラミングの関係を示唆できた。・胎児性癌細胞の発癌初期の腫瘍形成の場“ニッチ(ゆりかご)”の解明:モデル動物で遺伝学的トレースマーカーを用いて経時的に卵巣組織内で生殖細胞が原因となるのかが明らかにされた。今後は発癌初期組織特有の抗原蛋白を同定や、胎児癌早期発見のマーカーとなりうる抗原の有無を明らかにし、早期発見方法の樹立を目指す。・胎児性癌の腫瘍形成ニッチでの遺伝子発現変化とエピジェネティック変化の解明:発癌前の組織と発癌後の組織の遺伝子発現を網羅的に解析することにより、発癌のキーとなる遺伝子群は明らかにされた。しかし、残念ながら完全にキーとなる遺伝子は単離されなかった。今後は卵巣組織内の癌の元になる細胞(卵子と思われる)から腫瘍へのエピジェネティック修飾の変化を調べる予定である。・ヒト胎児性癌患者さん培養細胞での後方視的検証とマーカー候補探索:ヒト胎児性癌培養細胞とげっ歯類モデルの遺伝子発現比較を行い発癌現象の高い類似性が、明らかにされた。この仮説がヒトにも当てはまる可能性が高いが、ヒトでのTeliumの胚細胞性腫瘍の分類が実験腫瘍発生学的な妥当性の解釈や、ヒトでの早期発見マーカー候補調査はこれからである。・抗がん剤の効果を調べる胎児性癌ラットモデルの作成:ヒト癌と同様に転移や病状の評価が可能なラットモデルで発症させたラット個体を用いて胎児性癌の原発巣・転移巣に対する抗がん剤の効果を調べる応用は今後順次行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
コロナウィルス感染症による全世界的なプラスティック供給不足、海外への検体搬送などにやや滞りは有ったが、研究手順の変化で対応し、おおむね順調に進んでいる。
本研究の研究実施計画に沿って詳述する。・胎児性癌の発生原因は卵巣組織内の不適切なリプログラミングである証明:ほぼ達しえたので、今後は発癌初期組織特有の抗原蛋白を同定や、胎児癌早期発見のマーカーとなりうる抗原の有無を明らかにし、早期発見方法の樹立を目指す。・胎児性癌の腫瘍形成ニッチでの遺伝子発現変化とエピジェネティック変化の解明:発癌のキーとなる遺伝子群の一覧は得られたが、残念ながら完全にキーとなる遺伝子・遺伝子群の主軸は明確とならなかった。今後はこの遺伝子群のシステマティックな役割の可能性を文献などで機序構築したり、卵巣組織内の癌の元になる細胞(卵子と思われる)から腫瘍へのエピジェネティック修飾の変化を調べる予定である。・ヒト胎児性癌患者さん培養細胞での後方視的検証とマーカー候補探索:ヒト胎児性癌培養細胞とげっ歯類モデルの遺伝子発現比較を行い発癌現象の高い類似性が、明らかにされた。今後は、ヒトでのTeliumの胚細胞性腫瘍の分類が実験腫瘍発生学的な妥当性の解釈や、ヒトでの早期発見マーカー候補調査を考えている。・抗がん剤の効果を調べる胎児性癌ラットモデルの作成:ヒト癌と同様に転移や病状の評価が可能なラットモデルで発症させたラット個体を用いて胎児性癌の原発巣・転移巣に対する抗がん剤の効果を調べる応用を今後順次行う予定である。
新型コロナウィルスの流行により、国際学会へ参加が困難な状況や、Webで参加することが多かったために、旅費に相当する部分が、大幅に減額された。また、プラスティック機器や動物実験用の消耗品が購入できない時期があり、動物実験室からは動物実験自粛の通知が出たので、その他の費用は減額された。次年度使用額は、消耗品は十分になってきた次年度以降に行うこととした動物実験の費用と、外注検査の回数を拡充するのに充てる予定である。
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Biol Reprod.
巻: 102 ページ: 607-619
10.1093/biolre/ioz202.