研究課題/領域番号 |
20K18174
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
増田 健太 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (30773460)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 卵巣癌 / 微小残存病変 / RNA sequence / オルガノイド |
研究実績の概要 |
卵巣癌、特に漿液性癌は、化学療法に対する寛解率が高いものの、その後高確率で再発に至る。その事実は、化学療法後に微小残存病変が存在し、卵巣癌再発の直接的な要因となっていることを示唆している。しかしながら卵巣癌微小残存病変に対する解析方法は確立されておらず、有効な治療法はない。 本研究では、卵巣癌再発の直接的原因である微小残存病変を治療標的とした”真の精密医療”を実現するため、化学療法前後の臨床検体を用いた網羅的遺伝子発現解析を行い、さらに卵巣癌の微小残存病変を模倣したモデルを開発により、新たな治療戦略を立案することを目的としている。 まずは卵巣癌の微小残存病変に対する解析を行うため、患者同意を取得した臨床検体の収集および解析を行った。これまでに卵巣癌患者の化学療法投与前と投与後のペア凍結検体に対して、LCM(Laser capture microdissection)を用いて癌細胞のみを採取し、RNA-seq解析を行ったところ、薬剤抵抗性に関わる遺伝子群とされる幹細胞マーカー、薬剤トランスポーター、および脂質代謝に関わる遺伝子群の発現の上昇を認めた。本知見は現在論文投稿中である。 続いて、卵巣癌微小残存病変をマウスの生体内で再現することのできるマウス卵巣癌モデルの作成を試みた。オルガノイド培養法を応用し、マウスの卵管上皮、卵巣上皮に選択的に遺伝子導入を行うことで、ヒトの卵巣癌に類似したマウス卵巣癌モデルの開発に成功した。現在、さらに卵巣癌微小残存病変をマウスの生体内で再現するべく条件検討実験を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
卵巣癌検体の収集および解析は当初の計画通りに進行している。 また卵巣癌微小残存病変を再現する系の立ち上げを試みたところ、マウスを用いた系の開発が想定よりも順調に進展した。現在既に、ヒトの卵巣癌に類似したマウス卵巣癌モデルの開発に成功しており、引き続き卵巣癌微小残存病変の疾患モデルマウスの作成に向けた実験を開始している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に開発したマウス卵巣癌モデルを用いて、in vitro, in vivoにおいてヒト検体で得られた知見のvalidationを行う。さらに同マウスモデルを用いて、卵巣癌微小残存病変に対する新たな治療標的に対する治療実験を開始する。
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