研究課題/領域番号 |
20K18180
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
江畑 貴大 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 特任研究員 (80769620)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 卵巣がん / DNAメチル化 / 治療抵抗性 |
研究実績の概要 |
国立がん研究センター中央病院における術前化学療法を受けた卵巣高悪性度漿液性腺癌の手術検体103症例を入手し、screening cohort30症例においてBRCA1やTP53などの卵巣がんにおいて報告がある遺伝子変異解析およびDNAメチル化の網羅的解析を行い、治療感受性に関わる候補遺伝子を同定した。また、エンハンサー領域におけるメチル化解析も行い、治療感受性に関わる候補領域として同定した。 validation cohorとして45症例の遺伝子変異解析およびpyrosequencingにて候補遺伝子、エンハンサーのメチル化解析を行い、LRCOL1のDNAメチル化(p=0.0028)と8番染色体領域にあるエンハンサーのメチル化(p=0.012)が再現性のある予後不良因子として同定した。 LRCOL1は脂質代謝に関わる補酵素であり、がん細胞における代謝の変化が治療抵抗性に関与している可能性が考えられる。エンハンサー領域についてはメチル化により標的遺伝子への作用が減弱すると考えられるため、標的遺伝子の発現低下が治療抵抗性に関与すると考えられる。 また、付随研究として、卵巣がんの腫瘍細胞率を推定できるDNAメチル化マーカーとしてZNF154を同定し(R= 0.77, P < 0.0001)、論文として発表した(Med Oncol. 2022 doi: 10.1007/s00520-020-05880-5.)。さらにBRCA1のメチル化レベルが領域特異的に予後と関連することを発見し、この領域におけるpyrosequencing用のプライマーを作成し、予後と関連することを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的遺伝子、領域の同定に成功し、付随研究も論文化ができている。
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今後の研究の推進方策 |
目的遺伝子のDNAメチル化によるサイレンシングがどのように治療抵抗性に関わっているかknockdown, knockout, overexpressionを行う。目的遺伝子の発現変化による薬剤感受性変化を評価し、①細胞内代謝解糖系および酸化的リン酸化経路のメタボリックシフトの測定やメタボローム解析による代謝産物量の変化などの細胞内代謝の評価、②リン酸化タンパク抗体アレイによる活性化している経路の同定、およびその下流経路への影響の評価などのシグナルの変化に着目して化学療法抵抗性に関与するメカニズムを解明する。また、目的遺伝子のDNAメチル化サイレンシングにより治療抵抗性が獲得されると同時に、不活化を補うために特定の経路への依存が大きくなっていると予測される。そこでsiRNA libraryを用いて合成致死をもたらす経路、標的を同定する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
目的遺伝子の同定に成功したため、現段階で論文投稿を行う方針とした。 本年度は論文投稿費用、リバイス実験、学会発表を行う予定である。
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