胎児期の曝露が児の健康アウトカムや成人期の健康アウトカムの一部と関連しているとする考え方が近年注目を集めている。そこで、本研究では低出生体重児として出生した女児を対象として、成長し妊娠した後のアウトカム(周産期アウトカム、出生児のアウトカム)への影響に関しての調査を行った。本研究では「母子手帳」を用いることで客観的で正確な出生時の各曝露因子をデータ抽出出来ると考え、成育医療研究センターで出産予定の妊婦を対象として自身の出生時母子手帳データを提供してもらうことで、妊婦自身が胎児期に受けた曝露因子に関するtrans-generational effectを検討した。 本研究は3年計画で行われた。初年度は本研究計画の倫理審査委員会への申請・承認、研究補助員の雇用、研究を行う当該部署(成育医療研究センター産科)への周知活動を行い、同年より参加者のリクルートを開始した。2年目、3年目はリクルートを継続し、1500名について、母子手帳データを収集した。 1500名の内、71名が低出生体重児であった。低出生体重児として出生した女児と非低出生体重児として出生した女児では、妊娠アウトカムに有意な相違を認めなかった。本研究結果については論文作成中としている。また、本研究では同時に妊婦の母親にアンケートをおこない、現在の健康状態について聴取している。本研究のサブ解析として、妊婦自身が胎児だったときの母親の妊娠経過と現在の母親の健康状態についての関連を見ている。妊娠中に尿糖が出ていると将来の糖尿病が、蛋白尿が出ていると将来の腎疾患が、血圧が軽度上昇(収縮期血圧130台)では将来の高血圧のリスクが高いことが明らかとなった。本結果は査読付き英文論文報告済みである。また、同データを用いて妊娠中の体重増加が多いと将来の糖尿病のリスクが高いことも動じに明らかにした。こちらについては現在論文投稿中である。
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