研究課題/領域番号 |
20K18183
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
藤嶋 明子 秋田大学, 医学部附属病院, 医員 (00866460)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 経会陰超音波検査 |
研究実績の概要 |
分娩進行の評価法として手指による内診法が用いられているが、検者間・検者内誤差が大きいことが指摘されている。経会陰超音波検査(intrapartum-transperineal-ultrasound;以下ITU)は、恥骨と児頭の位置関係を客観的に評価でき、2018年にはISUOGからガイドラインが発表されたが、本邦では普及していないのが現状である。我々はITUによる客観的な分娩評価法の普及を目指し、陣痛促進剤開始時から分娩まで定期的に内診およびITUで診察した。 パイロットスタディの期間も合わせ、2019年3月から2020年12月までの正期産、単胎の分娩誘発症例の、のべ56分娩(47症例)、ITU計323回を検討した。ITU所見は主にangle of progression(AOP)を使用した。1)内診とAOPの関連を調べた。2)時間軸で描いたAOP曲線を作成し、初産群と経産群および自然分娩群と器械分娩群で比較した。 その結果、1)AOPとStは強い相関を認めた(R2= 0.6772)。StごとのAOPの平均値はISUOGで示されているAOPと乖離を認めた(例:St=0で 142.4°(本結果) vs 116°(ISUOG))。 2)AOP曲線においては経産群は初産群と比較し分娩直前に急峻な上昇を認めた。自然分娩群では指数関数的に上昇したが、器械分娩群では直線的に上昇した。 上記結果からITUはStを客観的に評価可能であり、分娩様式の予測が可能であることが示唆された。本結果とISUOGの値に乖離を認めたことから、ITUは人種による体格の違いが影響することが推察され、ITUの分娩時使用を普及させるためには更なるデータ集約が必須と考え、更なる症例蓄積を重ねている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年3月までで80分娩のITU所見(AoP, PD)の蓄積を行なった。研究計画では、妊婦100名の検査を目標としており、順調に症例蓄積を行えていると考える。 また、2019年3月から2020年12月までの症例のデータ解析を行なった。のべ56分娩(47症例)、ITU計323回を検討した。AOPとStは強い相関を認めた(R2= 0.6772)。さらに検者間・検者内誤差が少なく、内診に比べ客観性の高い診察手技であることが示された。しかし、StごとのAOPの平均値はISUOGで示されているAOPと乖離を認め(例:St=0で 142.4°(本結果) vs 116°(ISUOG))、さらに患者間でばらつきがあることも明らかになった。AOPに影響を与える因子として、身長、体重、経産・初産、胎児推定体重などが考えられ、今後検討が必要と考えられた。 経時的にAOPの推移を描いたAOP曲線においては経産群は初産群と比較し分娩直前に急峻な上昇を認めた。自然分娩群では指数関数的に上昇したが、器械分娩群では直線的に上昇することが明らかになり、本研究の目的であるAOPによるパルトグラムの作成が可能であると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、更なる症例の蓄積を目指す。経会陰超音波の所見は同一患者では誤差が小さく、分娩進行を正確に評価することが可能であるが、患者間で誤差が生じる可能性が考えられた。患者の母体因子(身長、体重)、胎児因子(体重、頭囲、回旋異常)等、経会陰超音波所見に大きく影響を及ぼす因子を特定し、経会陰超音波を汎用性のある手技として確立することを目指す。現時点ではAOPの分析を行なっているが、PDを含めた他のITU所見についても分析を重ね、より正確・客観性のあるITU評価法を見つける。 以上のようにITU手技の確立および、ITUによるパルトグラム作成を行い、周産期医療の安全性向上に繋げる。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19流行に伴い、現地での学会参加ができなかったため、学会参加費・交通費が予算よりも少なくなった。来年度以降は、オンライン学会への参加及び、発表を積極的に行う。 また、予定よりも症例蓄積が順調であり、検査時に使用するプローべカバーの追加購入等を予定している。
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