研究課題
慢性子宮内膜炎(CE)は着床障害の原因となる疾患である。着床には子宮内膜の免疫細胞が重要な役割を果たしている。今回、ヒト着床期子宮内膜内の免疫細胞の一種であるヘルパーT細胞亜群の分布とそのCEの病態への影響を検討した。対象は滋賀医科大学医学部附属病院で体外受精治療中の患者とした。着床期子宮内膜を採取し、一部はCD138免疫組織染色を施行して、形質細胞が1個/10HPF以上認めるものをCEと診断した。残りの検体は細切後、酵素・溶血処理した後、MACS SeparatorでCD45陽性細胞を分離した。サイトカイン解析のため細胞刺激を施行した後、染色してFlow Cytometryで解析した。また、Th細胞と形質細胞の関連を検討するため、CE患者の着床期子宮内膜標本に対してCD4およびCD138蛍光免疫染色を施行した。CE群12例、non-CE群7例を対象とした。Flow Cytometryでの解析では、CE群はnon-CE群に比べTh1細胞が有意に多く、Th2細胞が少なかった。Th17細胞、Treg細胞について差は認めなかった。次に、Flow CytometryでのCD4陽性細胞中のTh1・Th2細胞の割合とCD138免疫組織染色での形質細胞数の相関を検討すると、CEではCD138陽性細胞が増えるほどTh1細胞は増加し、Th2細胞は減少した。さらに、7例のCE症例において子宮内膜のCD4およびCD138蛍光免疫染色を施行したところ、CD4陽性細胞は有意にCD138陽性細胞周囲に集蔟していることが明らかになった。研究結果は“Alteration in endometrial helper T cell subgroups in chronic endometritis”というタイトルでAm J Reprod Immnol.に誌上報告した。
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American Journal of Reproductive immunology
巻: 2020 Nov 25. ページ: e13372.
10.1111/aji.13372.