研究課題/領域番号 |
20K18195
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
澤田 祐季 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (90793589)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 人工知能 / ディープラーニング / タイムラプスイメージング / Attention Branch Network / 胚透明帯 |
研究実績の概要 |
人工知能(AI)の学習技術であるディープラーニングを用いて、タイムラプスイメージングによって得られた胚画像の学習を行った。まずは生児獲得の可否を胚画像から予測するAIの作成を試みた。 生殖補助医療を受けた175人の患者から得られた、健児の出生に至った成功胚91個と妊娠が成立しなかった不成功胚379個の計470個の移植胚の画像を対象とした。1つの胚あたり約70~700枚、計140,000枚の画像それぞれに生児獲得成功か生児獲得不成功の正解のみを与えたうえで、Attention Branch Networkを用いてディープラーニングさせた。そして作成されたAIが算出した各画像の成功予測値を加重平均した最終的な各胚の成功予測値で、生児獲得を予測できるかを後方視的に検討した。またAIの生児獲得予測の判断根拠を可視化することで、生児獲得可否に関連する胚の特徴を見出すことも試みた。 成功胚群の成功予測値は不成功胚群に比べて有意に高かった(p<0.01)。成功予測値の生児獲得に対するAUCは0.642であり、ROC曲線から算出したカットオフ値より成功予測値が高い場合は、低い場合に比べて、生児獲得に至った胚の割合が有意に高かった(p<0.01)。さらに成功予測値が上昇すると生児獲得に至った胚の割合が増加する傾向も認められた(p<0.01)。 以上の結果により、我々が作成したAIが算出した成功予測値は生児獲得の予測に有用であると考えられた。またすべての胚画像を可視化することはできたが、AIが生児獲得成功や不成功を予測できた胚に共通する特徴を、我々が認識できるまでには至らず、生児獲得の予測に有用な胚の特徴を見出すことはできなかった。しかし全体を通して、透明帯周辺にAIの注目が集まっている画像を多く認めたため、AIが透明帯の何らかの特徴を認識し、生児獲得を予測している可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ディープラーニングで良好な性能のAIを作成するためには、できる限り学習させる数を増やす必要がある。しかし本年度までの研究では、染色体解析を行った胚を研究計画調書に記載した十分な数を得ることができなかった。そのため、胚画像から染色体異数性の有無を予測するAIを作成するには至らなった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で我々が作成したAIの予測性能は、現在までに報告されているタイムラプスイメージングによって観察できるパラメーターによる生児獲得予測と同程度であり、臨床的な胚選択で応用するにはさらなる性能の向上を目指す必要があると思われる。今後は学習させる胚の個数を増やしたり、時系列画像として学習が可能なネットワークを構築することで、さらにAIの性能を向上させることを目指す。さらに本研究で得られたAIの学習方法を、胚染色体異数性の有無の分類に適応することが可能であるため、染色体解析を行った胚の数が集まり次第、本研究の主目的である、胚染色体異数性の有無を予測するAIの作成を試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
胚染色体解析および人工知能による胚画像解析に用いる物品費として使用する予定であったが、今年度に予定していた数の解析までは行えなかった。次年度に繰り越して、引き続き解析を行う予定である。
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