研究課題/領域番号 |
20K18204
|
研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
杉田 洋佑 日本医科大学, 医学部, 助教 (60774354)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 早産 / 子宮頸管熟化 / プロゲステロン消退 / 無菌性炎症 / 好酸球性炎症 |
研究実績の概要 |
子宮頸部におけるプロゲステロン(P4)シグナルによる妊娠維持のメカニズム解明のため、臨床背景の異なる症例の子宮頸部線維芽細胞培養系(UCFs)を樹立し、P4応答を比較した。妊娠中期に異常な熟化をきたす難治性頸管無力症患者に対して経腹的子宮頸管縫縮術を実施し妊娠維持した症例を頸管完全熟化症例(n=3)として、正常に妊娠維持した子宮頸管未熟化のコントロール(n=3)として帝王切開時に子宮頸部組織を採取した。培養細胞へのP4添加による遺伝子発現の変化をRNA sequenceで解析したところ、未熟化例で認めるP4応答が頸管無力症症例で減弱していることを確認した。さらにその原因としてP4受容体(PR)の発現をリアルタイムPCR、ウエスタンブロット(WB)、細胞免疫染色で解析したところ、頸管熟化症例ではPRが顕著に減少していた。 一方でRNA-sequenceによる網羅的な解析において子宮頸管未熟化例に共通して認めるP4応答遺伝子は少数に限られ、P4の直接的な作用は限定的であることが示唆された。そのため、P4による妊娠維持の本態は炎症抑制作用であり、P4消退により生じる無菌性炎症の解明が子宮頸管熟化や早産の原因解明につながると考えマウスでの検討を行った。 マウス早産モデルとして妊娠15日目マウスにP4受容体拮抗薬を投与し12時間後に子宮頸部を摘出し解析した。P4消退により誘導されるサイトカインをPCRアレイで解析し、複数のサイトカイン、ケモカインを抽出した。さらにFACSにより子宮頸部における細胞分画を抽出しそれぞれ遺伝子発現を検索することで、特定の細胞におけるCCL11の発現増加と好酸球誘導がP4消退による頸管熟化過程において誘導されていることを明らかにした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画においてはプロゲステロンに対する応答遺伝子に着目していたが、その働きが限定的であることが示唆されたためプロゲステロン消退により生じる無菌性炎症に着目した研究を継続している。
|
今後の研究の推進方策 |
プロゲステロン消退型早産モデルマウスを用いた子宮頸部のFACSの手法を確立し、細胞集団の分離及びそれを用いた検討を予定している。さらにマウス子宮頸部を用いたシングルセルRNA seqenceによる解析を計画している。プロゲステロン消退が子宮頸部においてもたらす変化を、個々の細胞ごとに解析しプロゲステロン消退による頸管熟化の全体のメカニズム解明を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度予算はサンプル収集のための妊娠マウス購入が主となり、実験には前年度に購入した試薬を利用したため残額が生じた。収集したサンプルを用いたシングルセルRNAシークエンス及びその結果から生じる仮説に対する検証のために翌年度分と合わせ手次年度使用額を充当する予定である。
|