本研究では、AYA世代を含めた若年がん患者の妊孕性温存療法として行われている卵子凍結の治療成績を向上させることを目指しており、最終目標は妊孕性温存 療法の一つである卵巣組織凍結時に得られる未熟卵子を体外培養し、成熟卵子を獲得する技術の確立である。本研究では、成熟卵子における細胞障害の原因究明 として、凍結・融解ストレスによるミトコンドリア動態に関連した障害を検討した。2021年度に使用していた共焦点レーザー顕微鏡ZEISS LSM 500によって撮影 した結果では、マウス新鮮・凍結融解成熟卵子におけるMT・TMRE染色後、ミトコンドリアのクラスター分布及びその面積を解析した結果は、両者でクラスター数 に有意差は認めないが、クラスターあたりの面積は増大することが明らかになった。しかし、2021年度に実施したデータはあくまでも2D撮影におけるデータであ り、体積評価をすることで大きくデータが異なるのではないかという疑問が残ったため、大学院共同研究施設にて、ZEISS LSM 900 with Airyscan 2という新規の共焦点レーザー顕微鏡を購入し、3D撮影におけるデータ解析を行い、2Dにおけるデータ解析と共に3Dにお けるデータ解析が同様の結果をもたらす結果となるかどうかについて検討を行った。その結果、2D及び3Dにおけるデータ解析共に、マウス新鮮・凍結融解成熟卵子にお けるMT・TMRE染色後、ミトコンドリアのクラスター分布及びその面積、体積では両者でクラスター数に有意差は認めないが、クラスターあたりの 面積は増大すると言う結果を得た。サンプル数を増やし、再検討を行った結果、得られたデータに齟齬がないことを確認した。マウス成熟卵子における凍結・融解ストレス障害に対してミトコンドリア動態は変化し、恒常性の維持が図られていることを見出した。
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