研究実績の概要 |
2018年において世界中で38万人を超えるがん患者が新たに子宮体がんと診断され、日本においても子宮体がんは女性の悪性腫瘍の中で乳がんに次いで多い腫瘍である。 類内膜がんG3は子宮体がんの約10%を占め,漿液性がん(USC)や明細胞がん(CCC)とともにtype2に分類される.類内膜がんG3に対する予後および適切な治療に関しては相反する報告があり,未だ確立されていない.本研究は類内膜がんG3における日本人集団の体細胞変異とactionable 変異の頻度を明らかにし,新たな予後不良因子の同定や分子標的薬の恩恵が受けられる集団の特定を目的とした.The Ion AmpliSeq Cancer Hotspot Panel v2を用いて207ヶ所のプライマーペアにより50のがん遺伝子,がん抑制遺伝子,約2800の変異を網羅的に探索した.変異はTCGAとClinVarに”pathogenic/likely pathogenic”もしくは,”oncogenic/likely oncogenic“な変異として登録されているものを選択した.子宮体がんG3においてCTNNB1変異は生存/再発ともに予後不良因子であった.TCGAデータと比較して日本人集団でSMAD4変異が有意に多かった. それ以外の遺伝子変異の頻度は、欧米人と大きく変わらなかった.G3 77症例中57例(74.0%)にActionable変異を認めており, 分子標的薬の恩恵が得られる可能性が示唆された.本研究でアジア人を対象としたゲノム解析を施行したことで、報告の少ない子宮体癌G3の新たなアジア人データを提示することができたと考える。 最近では、ProMiseによる分子プロファイリングによる予後分類がされておりいくつかの報告があるが、アジア人類内膜がんG3にも適応できるかは不明である。今後は本研究の結果をProMise studyの分類に当てはめてアジア人でも同様の結果が得られるかを検証する予定である。
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