研究課題/領域番号 |
20K18208
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研究機関 | 国立研究開発法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
辻 敦美 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, システム発生・再生医学研究部, (非)研究員 (40842414)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 精巣形成 / Sox9 / エンハンサー |
研究実績の概要 |
近年のES/iPS細胞を用いた分化誘導技術の発展に伴い、卵子・精子の分化培養技術が開発されつつあるが、誘導の際に生殖腺体細胞との共培養が必須であることから、体細胞自体の分化誘導も期待されている。その一端として、精巣形成因子であるSOX9の発現調節解明は重要な課題である。本課題では、マウスで近年同定されたSox9の遺伝子発現調節領域mXYSRa/Enh13について、ヒトで相同な配列(hXYSRaとする)を同定し、その遺伝子発現調節機能(エンハンサー機能)およびその結合因子についてゲノムヒト化マウスを用いて解明する。 2020年度は、ヒトSOX9の5’上流領域に存在する遺伝子発現調節領域候補配列(hXYSRaとする)のエンハンサー機能を明らかにするため、hXYSRa-Hsp68p-LacZコンストラクトのトランスジェニックマウスを作製したが、現時点で目的マウスが得られておらず、引き続き解析を継続している。また、培養細胞におけるレポーターアッセイも予定している。 一方マウスの相同領域(mXYSRa)とhXYSRa配列を置換させたマウスをゲノム編集にて作成し、エンハンサー機能を行った。本置換をホモ接合性に持つXYマウス(F2)について解析し、野生型のメスマウス同様の生殖腺・内外性器を示していた。置換のみではhXYSRa配列がSox9の発現を十分誘導できず、精巣への分化が誘導されないことが明らかとなった。 本成果により、hXYSRaの機能を明らかにする上で、1) ヒトSOX9プロモーターと相互作用できる条件での評価が必要であること、2) hXYSRaに作用する転写因子をヒト由来とした条件での評価が必要である、といった新たな課題が見出された。今後はこれらの解決のため、追加ゲノム編集による遺伝子改変マウスの作製と、エンハンサー機能の確定を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
産育休の取得、COVID-19流行に伴い緊急非常事態宣言による実験履行困難な時期の存在があったため。 さらにゲノムヒト化マウスの成果により、新たな課題が明らかとなったため。
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今後の研究の推進方策 |
現在候補としているhXYSRa領域の遺伝子発現調節機能の確認について、トランスジェニックマウスおよび培養細胞系でのレポーターアッセイを継続して解析を行う。 さらに新たな課題を解決するため、mXYSRa/Enh13配列がhXYSRa配列に置換されたマウスにおいて、1) ヒトSOX9プロモーターを挿入する、2) ヒトSRYを発現させる、といった追加のゲノム編集を行い、hXYSRaによるSOX9の発現調節を生体で再構築することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
産育休の取得、COVID-19流行に伴う緊急非常事態宣言発令などにより、実験履行困難な時期が生じ、次年度以降に実験を延期したため。
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