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2020 年度 実施状況報告書

卵巣癌の腫瘍微小環境におけるB7H3を標的とした治療開発

研究課題

研究課題/領域番号 20K18210
研究機関滋賀県立総合病院(研究所)

研究代表者

村上 隆介  滋賀県立総合病院(研究所), その他部局等, 医長 (40782363)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2022-03-31
キーワード卵巣癌 / 腫瘍微小環境 / トランスレーショナルリサーチ / CD276/B7H3
研究実績の概要

進行再発卵巣癌の悪性形質の中でEpithelial Mesenchymal Transition (EMT) 上皮間葉転換は癌の①浸潤転移、②強い免疫抑制、③腫瘍血管新生に関わる。癌を取り巻くEMT形質は腫瘍微小環境における線維芽細胞、免疫抑制系細胞と癌との相互作用により形成され、癌治療抵抗性の因子と考えられる。令和2年度は、卵巣癌の腫瘍微小環境における免疫チェックポイント分子のPD-1/PD-L1ファミリーであるCD276/B7H3の繊維芽細胞、免疫抑制系細胞におけるCD276/B7H3発現パターン解析を、ヒト卵巣癌手術検体とマウス卵巣癌腹膜播種モデル(HM1細胞)を用いて行った。データベースからの解析では、卵巣癌における免疫活性化マーカーであるIFNγとB7ファミリーであるPD-L1,PD-L2は正の相関にあるが、CD276/B7H3は負の関係にあり、免疫抑制の強いEMT型であるMesenchymalタイプに高発現していることが見いだされた。Crispr/Cas9によりCD276/B7H3をknock outしたHM1細胞株でマウス自然免疫モデルで行った検討でM2マクロファージが抑制され、IFNγ陽性CD8陽性細胞がコントロールに比し増加していた。このことからCD276/B7H3を抑制する治療は免疫抑制を免疫活性に転換できる可能性が示唆される。
EPCAM、CD45、CD31を用いたフローサイトメトリーによる解析で、CD276/B7H3が高発現する繊維芽細胞の集団をヒト卵巣癌検体を用いて行った解析から見出した。さらにマクロファージや骨髄由来抑制系細胞(MDSC)の分画もヒト、マウスの卵巣癌モデルで調べるとCD276/B7H3が高い分画が存在することが見いだされた。このことは卵巣癌はその腫瘍微小環境において癌だけではなく間質細胞も免疫抑制に関与していることが示唆される。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

Covid-19感染拡大下のため物流の問題、感染対策のプライオリティの問題でやや進行が遅れている。

今後の研究の推進方策

令和3年度は、CD276/B7H3の上流・下流の因子を調節メカニズムの解明を試みる。
卵巣癌の同系マウスモデルHM1, ID8を用いて、CD276/B7H3および上流下流因子をそれぞれCrispr/Cas9によりknock outを行うことで、同遺伝子の表現型の違いに基づく、癌と癌関連線維芽細胞との相互作用を機能解明する。ID8に対応するCD276/B7H3のノックアウトマウスC57BL/6(B6) からbackcrossを行い、 HM1に対応するB6C3F1におけるCD276/B7H3のノックアウトマウスを作成する。より悪性度の高いHM1細胞株の同種マウスの系を用いて腫瘍間質におけるCD276/B7H3の表現型の違いから、腫瘍の発育の違いやEMTおよび免疫細胞の分画の影響、サイトカインの分泌など癌と間質細胞の相互作用におけるCD276/B7H3の機能を明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

Covid-19感染拡大下にあり、物品の流通の問題と、感染対策と研究のプライオリティーから、物品購入を控え、次年度使用額が発生することになった。今年度は、CD276/B7H3の結合蛋白や調節しうる遺伝子を解析し、whole genome CRISPR screening を行い、B7H3の発現制御に関与する遺伝子群を網羅的に同定する研究計画を候補としており、CD276/B7H3上流下流を同定することを研究計画する。またCD276/B7H3のノックアウトマウスのバッククロスをHM1細胞株の自然免疫卵巣癌モデルで行うことで、間質細胞におけるCD276/B7H3の発現の有無が与える癌細胞への影響を検証する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] UGT1A1 polymorphism has a prognostic effect in patients with stage IB or II uterine cervical cancer and one or no metastatic pelvic nodes receiving irinotecan chemotherapy: a retrospective study2020

    • 著者名/発表者名
      Hideki Matsuoka, Ryusuke Murakami, Kaoru Abiko, Ken Yamaguchi, Akihito Horie , Junzo Hamanishi, Tsukasa Baba , Masaki Mandai
    • 雑誌名

      BMC Cancer

      巻: Aug 5 ; 20(1) ページ: 729

    • DOI

      10.1186/s12885-020-07225-1.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Low-Grade Endometrial Stromal Sarcoma with a Nodule-in-Nodule Appearance in Preoperative Magnetic Resonance Images2020

    • 著者名/発表者名
      Mitsuhiro Nakamura, Ryusuke Murakami, Kaoru Abiko, Taito Miyamoto, Yoshimi Kitawaki, Ken Yamaguchi, Akihito Horie, Junzo Hamanish, Eiji Kondoh, Tsukasa Baba, Aki Kido, Sachiko Minamiguchi, Noriomi Matsumura , Masaki Mandai
    • 雑誌名

      Case Rep Obstet Gynecol .

      巻: 2020 Jul 30 ページ: 8973262

    • DOI

      10.1155/2020/8973262.

    • 査読あり
  • [学会発表] OE12-1-2 CD276 contributes to immunosuppressive phenotype in ovarian cancer via CCL2-CCR2 axis2020

    • 著者名/発表者名
      Taito Miyamoto, Ryusuke Murakami, Koji Yamanoi, Kaoru Abiko, Ken Yamaguchi , Junzo Hamanish, Tsukasa Baba, Noriomi Matsumura, Masaki Mandai
    • 学会等名
      第79回日本癌学会学術総会

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公開日: 2021-12-27  

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