卵巣癌におけるB7-H3のCCL2-CCR2-M2マクロファージ経路による免疫抑制への関与を明らかにした。 ・免疫正常マウスにおいて、マウス卵巣癌細胞のB7-H3をノックアウト(KO)すると、コントロール細胞と比較して、in vitroでの細胞増殖には差を認めず、in vivoでの腫瘍発育が緩徐になった。免疫不全マウスにおいて両群の腫瘍発育差は見られず、B7-H3が免疫システムを介して腫瘍の増殖に関与していることが示唆された。 ・腫瘍浸潤免疫細胞の解析にて、CD8+T細胞数には差を認めない一方で、B7-H3 KOの腫瘍ではM2マクロファージの数が減少し、IFNγ+CD8+ T細胞の数が増加し、抗腫瘍免疫の増強が確認された。マウス卵巣癌細胞株およびその腫瘍のRNAシークエンス解析にて、B7-H3 KO群において単球遊走因子であるCcl2の発現低下を認めた。 ・CCL2の低下は、shRNAを用いたヒト卵巣癌細胞株におけるB7-H3の抑制においても確認された。B7-H3抑制細胞株では、核内リン酸化STAT3の低下を認め、それが少なくとも部分的にCCL2の低下に関与していることが示唆された。 ・CCL2およびその受容体であるCCR2の阻害は、in vitroにおけるM2マクロファージの遊走と分化、およびin vivoにおけるM2マクロファージの浸潤および腫瘍の進行に対するB7-H3の作用を部分的に打ち消し、CCL2-CCR2-M2マクロファージ経路が、B7-H3を介した腫瘍発育促進の一部に寄与していることが示唆された。 ・ヒト卵巣癌において、B7-H3の発現はCCL2の発現および腫瘍浸潤M2マクロファージ数と正の相関を認め、B7-H3高発現群は、B7-H3低発現群に比べて、腫瘍内のIFNγ+CD8+T細胞が少なく、予後不良であった。
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