10例の卵巣がん患者由来スフェロイド細胞の新規確立に成功し、卵巣がんスフェロイド細胞パネルの作成に成功した。次に、卵巣がんスフェロイド細胞を用いた77種類の抗がん剤に対する感受性試験の結果、プラチナ製剤への感受性がスフェロイド細胞によって大きく異なることが明らかとなった。その結果を受け、スフェロイド細胞をプラチナ製剤に対する耐性が強い細胞群と耐性が弱い細胞群の2群に分類を行い、RNAシークエンスを用いた遺伝子発現解析によって両群の遺伝子発現を比較検討したところ、耐性がある細胞群では、ペントースリン酸経路の律速酵素であるG6PDと、それに関与する一群の酸化還元酵素の発現が高く、それらの分子がプラチナ製剤の耐性機序に関与していることを同定した。そして、スフェロイド細胞の増殖抑制実験や腹膜播種モデルを用いたマウス実験において、シスプラチンとG6PD阻害剤を併用投与することにより、スフェロイド細胞のもつプラチナ製剤への耐性が解除されることを見出した。さらに、過去に新潟大学医歯学総合病院で手術を受けた卵巣がん107症例のがん組織中のG6PDの発現を確認したところ、G6PDの発現の強さと患者予後(無増悪生存期間、全生存期間)に逆相関が認められた。本研究で用いた解析手法を用いることにより、他の薬剤の耐性機序に関与する分子も同定可能であると考えられた。
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