一般的にわが国の産科施設ではFriedmanによる分娩進行図(Friedman 曲線)を分娩進行の評価基準としてきた.しかし最近では,平均的な分娩進行は Friedman曲線で予測される時間より長い経過を辿るとの報告もみられ,今後更なるエビデンスの集積によって,分娩進行の評価基準が変わる可能性もある」Friedman曲線では子宮口開大3-4cmまでを潜伏期としていたが、米国産科婦人科学会/米国母体胎児学会(ACOG/SMFM)の コンセンサスでは子宮頸管開大6㎝未満、世界保健機構(WHO)では5cm 未満までを潜伏期と定義しているが、わが国には明確な定義が無い。本研究は、わが国における順調な分娩の平均的な経過を”自然分娩曲線”として表す事で、順調な分娩の経過を明らかにし、分娩第一期の活動期の開始時期を探ることを目的としている。国内3つの大学病院と、1つの2次医療施設(横浜市立大学付属市民総合医療センター、東京大学医学部附属病院、岡山大学病院、帯広厚生病院)から初産婦4215例,経産婦5267例の分娩データを用いて解析を行った。作成した分娩曲線から、初産婦、経産婦いずれにおいても分娩第一期は子宮口開大5㎝以降進行が加速し、子宮口開大6㎝以降さらに進行が早まることを示した。これにより、わが国における分娩第一期の活動期は子宮口開大5㎝以降であることを示した。昨年度は本研究結果を論文化し、国際誌へ投稿、受理された。本年度は本研究内容を日本産婦人科学会診療ガイドライン産科編2023の作成委員会へ提案し、本研究の成果を根拠に我が国の分娩第一期活動期の開始を子宮口開大5㎝以降と定義することが採用された。
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