研究課題
本研究では、新しい周産期予後予測マーカーの探索を目指して、胎児軟部組織(脂肪・筋肉)、および胎児四肢容積の計測を行った。本研究の成果として、妊娠中期から後期にかけて、超音波を用いて収集した胎児計測データをもとに3編の論文を投稿し受理された。まず、胎児軟部組織(脂肪量と筋肉量)の指標である胎児四肢容積について、日本人における正常発育曲線および各妊娠週数ごとの基準値を、本邦で初めて報告した(Journal of Clinical Medicine. 2021;10(3):485)。日本人の出生体重は欧米人と比較し低いことが知られているが、これまで胎児四肢容積についての比較は行われてこなかった。実際に欧米の既報と比較し、日本人における胎児四肢容積は、妊娠後期から特に差が出ることを報告した。また、妊娠糖尿病の母体からは、巨大児の出生するリスクが上昇することが知られている。今回、妊娠糖尿病の母体における胎児では、上腕容積(脂肪量を含む)が妊娠後期に増大することを見出し報告した(BJOG. 2021;128(2):329-35)。一方で、大腿容積は、妊娠期間を通じて、妊娠糖尿病群と正常耐糖能群で差を認めなかった。これは、妊娠糖尿病の母体では胎児の肩甲難産のリスクが上昇することとも対応しており、臨床的にも重要な知見と考えられる。さらに、上記成果を含めて総説にまとめ投稿し、受理された(Front Endocrinol. 2021; 12:708767)。今後、本研究で得られた知見をもとにして、胎児軟部組織量の規定因子の解明や、 周産期予後との関連の解明につながる可能性がある。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Front Endocrinol (Lausanne)
巻: 12 ページ: 708767
10.3389/fendo.2021.708767