従来の産科婦人科ガイドラインに基づく定義に則り、4つの一過性徐脈のコンピュータ判読を行うアルコリズムを作成した。アルゴリズムは基線、基線細変動を算出し、一過性徐脈の同定と種類の分類を行うものである。しかし、遅発一過性徐脈はその変化量の少なさから、アルゴリズムでは検出できない場合があったため、信号処理技術の中でも信号の確率的分布の変化を検出する手法を用い、人間であっても検出が難しい波形について検出を行うアルゴリズムを作成した。この成果をもとに、遅発一過性徐脈については、他の一過性徐脈とは独立したアルゴリズムを作成することで、判読アルゴリズム開発において検出精度を高めることができた。そのアルゴリズムの精度評価に20症例の分娩直前1-2時間のCTGを用い、周産期医学会母体胎児専門医の判読を絶対的基準として、アルゴリズム、産婦人科専門医、産婦人科後期研修医の判読を比較検討した。その結果アルゴリズムは一過性徐脈の位置同定(Position)に関して64.1%という、3者の中で最も高い陽性的中率を示した。このように我々が作成したアルゴリズムは本研究の前処理のなかでCTGの特徴量抽出に大きく貢献し、今後実施するCTGデータの前処理を大規模なデータに対して実行することが可能となった。大規模なデータは順天堂大学附属順天堂医院の電子カルテから抽出し、その臨床情報はプログラミング言語Pythonのモジュールであるpandasを使用し1つのDataFrameに統合、jupyter notebook上で任意の情報を抽出できるようにすることで、機械学習へのスムーズな応用を可能にした。
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