研究課題/領域番号 |
20K18234
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
廣瀬 佑輔 昭和大学, 医学部, 助教 (40869187)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | human papillomavirus / HPV18 |
研究実績の概要 |
本研究では、子宮頸癌やCIN/AISから検出されるHPV18型のゲノムDNAを詳細に解析し、そのわずかな変異がCIN進展や子宮頸癌の組織型・治療反応性/予後とどのように関連するか調べることを目的とする。HPV18 variantに関する研究はほとんどなく、疫学データ・臨床データがともに不足している。HPV18 variantの分布は地域や人種によって異なるとの報告があり、日本独自にも研究を進める必要がある。HPV18型は子宮頸癌から検出される頻度が高い割に、CINから検出される頻度は低いことが知られている。従来の子宮頸がん検診は細胞診をベースにしているが、細胞診ではHPV18陽性が多い子宮頸部腺癌やAISなどの腺系異常を見逃しやすいためと考えられている。しかし、HPV検査を導入した子宮頸がん検診が日本でも普及しつつあるため、これまで細胞診で見逃されていたHPV18陽性前癌病変患者が今後は増えてくる可能性が高い。海外ではワクチンによる予防効果が出始めているが、本邦ではワクチンも停止しているためHPV18陽性患者の数が減少することは期待できない。HPV18 variantによって進展リスクが異なることがわかれば、ウイルスゲノム情報に基づいたHPV18陽性前癌病変の管理が可能となる。HPV18陽性頸癌患者においてHPV18ゲノムのわずかな変異が組織型や予後などの癌の生物学的特性を規定しているとすれば、ウイルスゲノム解析によって放射線感受性・化学療法感受性が高く予後が良好な集団を特定することが可能となり治療強度の個別化を実現できるかもしれない。検出されるウイルスのゲノム情報が治療・予後マーカーとなり、分子標的薬の適応を決めるコンパニオン診断の役割を果たすことになれば、ウイルス発癌特有の治療戦略が確立されることになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
HPV18型の罹患率はHPV16型に比べて低いため、検体数の確保に懸念があったが新型ウイルスの影響による通院数の低下により想定よりも検体数の確保に遅れがある。今年度も追加で検体数確保に勤める必要がある一方で推進方策についても再検討する必要性がある。
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今後の研究の推進方策 |
想定よりも検体数の確保に遅れがあることより、HPVDNAの解析においては従来計画していた方策以外の検討を余儀なくされている。具体的な代替案としてはHPVDNAが血中移行することが知られているため、それの検出や定量化による臨床応用を新たな推進方策として打ち出す必要があるかもしれない。所属施設の倫理委員会の審査を経て、推進方策の変更を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
検体数の確保に難渋したため、それに必要と思われていた消耗品や結果として学会発表や論文投稿費用についても本年度は使用がなかった。そのため余剰分は次年度の新しい方策に使用することを検討していきたい。
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