研究課題/領域番号 |
20K18236
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
古形 祐平 大阪医科大学, 医学部, 助教 (80829953)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 子宮内膜症 / エクソソーム / miRNA |
研究実績の概要 |
予定していた研究方法は次の通りである。まず子宮内膜症病変や子宮内膜症性嚢胞の内容液、正常卵巣からそれぞれエクソソームを抽出し、また子宮内膜症病変以外の正常組織にも含まれていると考えられるエクソソームの抽出を行う。そして抽出したそれぞれのエクソソームに含まれるmiRNAを同定、解析し、子宮内膜症に特異的なmiRNAが同定できるかどうか、また特定できた場合miRNAが子宮内膜症の病状に及ぼす影響をin vitroで検証していくことを目的としていた。 組織から抽出する切除組織培養分泌エクソソーム(Te-EVs)は、外科的切除を行った新鮮組織を即時血清不含培養地にて回収、培養を行い、培養上清から超遠心法にてエクソソームを回収する手法である。この回収方法の特性から、病変部位から直接分泌されるエクソソームだけを回収でき、また同一患者においても比較検討できる点で、従来法よりも大きな利点として挙げられる。 現時点での実績は、子宮内膜症性嚢胞に対して付属器摘出術を行った3症例を対象とし検討を行った。まず嚢腫壁(内膜症病変)および正常卵巣部分から、Te-EVsを抽出することができた。マイクロアレイ解析の結果、嚢腫壁および正常卵巣部分から回収したTe-EVsはほとんど差を認めなかったが、一部のmiRNAで有意差を認めた。また正常卵巣よりも嚢腫壁で有意に多く発現したmiRNAを1種類認め、嚢腫壁よりも正常卵巣で有意に多く発現したmiRNAを3種類認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
内膜症性嚢胞に対して付属器摘出術を施行した3症例の嚢腫壁、および正常卵巣部分からTe-EVsを抽出し、nanoSightと走査型電子顕微鏡を用いて、Te-EVsが回収できていることを確認した。正常卵巣組織と嚢腫壁から回収したTe-EVs中に含まれるmiRNAをマイクロアレイで解析したところ、一部に有意に増加しているmiRNAを認めた。正常卵巣よりも嚢腫壁で有意に多く発現したmiRNAは1種類、嚢腫壁よりも正常卵巣で有意に多く発現したmiRNAは3種類認めた。そのmiRNAのターゲットとなる遺伝子を、Targetscan, miRWalk, miRDBを用いて検索したところ、Targetscanで27項目、miRWalkで17項目、miRDBでは1項目の遺伝子が同定された。 正常卵巣組織と内膜症性嚢胞組織におけるmiRNA発現の違いについては上述の通りであるが、もともと研究計画として予定している内膜症性嚢胞の内容液や、内膜症病変以外の子宮内膜組織、尿、子宮頚管粘液などに含まれているエクソソームに関しては検討できていない。
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今後の研究の推進方策 |
特定されたmiRNAがターゲットとする遺伝子を、ヒトのタンパク質の発現情報データベースを用いて卵巣組織に特異的とされる遺伝子を同定し、それが正常卵巣組織や子宮内膜症病変で発現しているのかを評価していく予定である。 内膜症性嚢胞壁と正常卵巣から回収したエクソソームに、ほとんど差は認めなかったことから、内膜症性嚢胞と正常卵巣はほぼ同様のエクソソームを排出している可能性が挙げられる。子宮内膜症発生機序として、体腔上皮化生説や子宮内膜移植説などがあるが、現在のところ仮説の範囲は越えておらず、この結果が病巣成立メカニズムの解明の一つになる可能性がある。 また、正常卵巣から回収したエクソソーム中に、内膜症性嚢腫壁よりも4種類のmiRNAが高発現していた。このことから、内膜症性病変は正常卵巣における4種類のmiRNAが何らかの影響で抑制されていることにより発生する可能性が考えられる。その解析もしていきたい。
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