研究実績の概要 |
子宮内膜症病変や正常卵巣からそれぞれエクソソームを抽出し、エクソソームに含まれるmiRNAを同定、解析し、子宮内膜症に特異的なmiRNAが同定可能か、またそのmiRNAが病状に及ぼす影響をin vitroで検証していくことを目的としている。 切除組織培養分泌エクソソーム(Te-EVs)は、外科的切除を行った新鮮組織を即時血清不含培養地にて回収、培養を行い、培養上清から超遠心法にてエクソソームを回収する手法である。この回収方法は病変部位から直接分泌されるエクソソームだけを回収できることが利点である。 本研究では、子宮内膜症性嚢胞に対して付属器摘出術を行った症例を対象とし検討を行った。まず嚢腫壁(内膜症病変)および正常卵巣からTe-EVsを抽出することができた。マイクロアレイ解析の結果、嚢腫壁および正常卵巣から回収したTe-EVsのほとんどは差を認めなかったが、嚢腫壁で1種類、正常卵巣で3種類のmiRNAが有意に多く発現していた。そのmiRNAのターゲットとなる遺伝子を、Targetscan、miRWalk、miRDBを用いて検索した。Targetscanで27項目、miRWalkで17項目、miRDBで1 項目の遺伝子がそれぞれ同定された。各々の遺伝子をTHE HUMAN PROTEIN ATLASを用いて、正常卵巣に特異的なADAM12, NAV3, HOXD11, RIMBP2の4つの遺伝子を同定した。その4つの遺伝子が嚢腫壁においても発現しているかを、Western Blottingとreal-time PCRを用いて評価する。またさらに、Te-EVsのマイクロアレイ解析で有意差を認めたmiRNAについて、内膜症患者における血清、子宮内膜組織での発現を確認し、子宮内膜症合併不妊症患者の妊孕性改善のため、これらのmiRNAの活用方法についても今後検討していきたい。
|